AIエージェントの進化を加速させたのが、2024年11月に米AIスタートアップ「Anthropic(アンスロピック)」が提案した「Model Context Protocol(MCP)」です。MCPは、エージェントやアプリケーション、データソースなどとの連携を標準化するためのオープンプロトコルで、「AIアシスタントを現実世界のデータやサービスにつなぐためのUSB-C規格のようなもの」と説明されています※8,9。
これまで、それぞれ個別に実装していたデータベース接続/操作やAPIコールにLLMを連携させて、自然言語的なインタフェースで取り扱えるようにするための仕組みです。これにより、システム上のデータもカバーするAIエージェントの作成が画期的に容易なものとなりました。下図は点検要領や交通量、地盤情報などのインフラや防災に関する各種データを組み合わせて回答するMCPを使ったエージェントの連携を表したものです※10。
※8 "Introducing the Model Context Protocol"Anthropic
※9 「AI界隈”が注目『MCP』って何?──KDDI子会社の解説資料が『分かりやすい』と話題」ITmedia AI+
※10 「Model Context Protocol(MCP)のインフラ・防災分野への適用に関する検討」/AI・データサイエンス論文集(投稿中)
検索にLLMを用いた検索拡張生成(RAG)で、自然言語で与えられた指示(クエリ)に対し、根拠のある回答を生成することが可能です※11,12。さらにMCPを利用することで、下図のようにAIが自らRAGのAPIにアクセスしたり、Web検索をしたりして得られた結果に基づき推論を進め、必要に応じてクエリを拡張して再度検索を行いながら回答を深められます。
※11 「大規模言語モデルの動向と利活用に向けた検討」杉崎光一,全邦釘,阿部雅人/AI・データサイエンス論文集5巻3号p220-230/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年
※12 AI・機械学習の用語辞典「RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)とは?」@IT
BIM/CIMで活用する3次元データモデル作成には手間や時間を要することから、生成AIで3次元データモデルを対話的に生成する方法が研究されています※13。そのような問題にもMCPは有効です。
下図は図面や写真を利用して寸法や形状を抽出し、3Dモデル作成ソフトウェアで動作確認をしながら3Dモデルを作成するMCPの例です。CADソフトを呼び出して生成することで、生成結果を確認しつつ、対話的にプロンプトを追加して、修正しながら作成することができます。
LLMを用いたAIエージェントによって、より高度で複雑な作業を行うことが可能になり、MCPの登場でエージェント間の連携も自然言語で容易に実現できるようになりました。AIエージェントのさらなる発展に伴い、現実の業務への導入やDXも急速に進んでいくのではないでしょうか。
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