筑波大学、熊谷組、奈良先端科学技術大学院大学は、自然災害発生時の復旧作業での活用を想定した建設用ロボットハンドと、自動掘削AIの動作実験を公開した。ロボットハンド技術は、チューリッヒ工科大学との国際共同開発し、壊れやすい物体でも柔らかく把持できる。自動掘削AIは「Sim-to-Real」強化学習を応用し、現場環境に合わせた最適な施工方法を自ら立案して、掘削と同時に地中埋設物もすくい取る自動化施工の技術だ。
筑波大学、熊谷組、奈良先端科学技術大学院大学は2025年8月7日、内閣府ムーンショット型研究開発事業 目標3「CAFEプロジェクト」の一環で、建設ロボットに搭載する自然災害対応用ロボットハンドと自動掘削AIの動作実験を茨城県筑波市内2カ所で公開した。
「CAFE(Collaborative AI Field robot Everywhere)プロジェクト」は、内閣府と科学技術振興機構が推進するムーンショット型研究開発(目標3)「自ら学習・行動し人と共生するAIロボット」の一環で進めているプロジェクト。予想できない現場環境にも臨機応変に対応し、従来は人力に頼ってきた自然災害現場での応急復旧などを可能にするドローンや小型ロボットなど複数台の協働AIロボットシステムのプロトタイプ開発が目標の5カ年プロジェクトで、2025年11月で終了となる。プロジェクトマネージャーは筑波大学 システム情報系 教授 永谷圭司氏。
プロジェクトは自然災害の中でも特に、「河道閉塞(大雨や地震のあとに崖崩れが発生して川の流れがせき止められてしまう現象。いわゆる天然ダムや土砂ダムのこと)」をターゲットにしている。PMの永谷氏は「2004年の中越地震では現地に人が行って排水ポンプを設置した。その危険を伴う作業を人ではなくロボットで代替することを目指した」と紹介した。
河道閉塞が起こる山間部での稼働が前提となるので、開発している調査用機材や建機の大きさもヘリコプターで輸送できる3トンを上限としている。技術成熟度を示す指標「TRL(Technology Readiness Level)」では、模擬環境で基本的な機能や性能を検証する「5」を目標としている。今回の実験は、その一つ手前の「4」で初期テストに当たる。今後は災害対応だけでなく、デュアルユースやその他の手法も検討しつつ、社会実装を目指す。
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