日立製作所は、法人向け生成AIプラットフォーム「Gemini Enterprise」を用い、インフラ系フロントラインワーカーの業務変革を目的に、AIエージェントの開発に乗り出した。既に日立パワーソリューションズで、設備機器の保守を対象に、原状復帰前後の画像比較で手順を合否判定するAIエージェントの検証を進めている。
日立製作所は2025年10月、Google Cloudが提供する法人向け生成AIプラットフォーム「Gemini Enterprise」を用いたAIエージェントの開発を開始したと発表した。電力や鉄道、製造など社会インフラ分野で、フロントラインワーカーの業務変革を目的としている。
Gemini Enterpriseの活用で、専門知識がなくても、ノーコードで特定のタスクを実行するAIエージェント作成が可能になる。特にセキュリティや機密性の高い現場でも活用できる点を強調しており、従来AI活用が困難だったAI活用が難しかったフロントラインワーカーの業務への適用がようになるメリットがある。
第一弾として、電力や産業分野の保守事業を担う日立パワーソリューションズで技術検証を開始。例えば、受変電設備の配電盤内の主機器となる真空遮断器(Vacuum Circuit Breaker:VCB)では、複数の保守員で点検作業を行っているため、ボルトの取付け方向の誤りやコンデンサーの電極配線接続ミス、放電クリップの取外し漏れといった人的ミスの発生の懸念がある。
そのため、保守員のトレーニングセンターで、従来は紙のチェックリストで対応していた原状復帰の確認作業について、Gemini Enterprise を活用したAIエージェントの適用可能性を試している。具体的には、保守作業の前後で撮影した画像を比較し、原状復帰の合否判定が可能かを試行。保守員はAIエージェントに画像を読み込ませるだけで、設備や機器に問題がないかを簡単にアラート情報として受け取れることを確認した。
現在は、年間数千台の設備に対して複数の保守員で点検を実施し、最終確認に熟練の検査員を要している業務にAIエージェントを用い、見落としなどを防ぐためのダブルチェックの精度を高め、点検作業のさらなる品質向上と効率化を目指している。
検証用AIエージェントは、必ずチェックしないといけない箇所やポイント、過去の確認作業で故障原因になった事象や注意点などを自然言語で打ち込み(プロンプトし)、正しい確認作業後の画像、誤りのある画像を何点か読み込ませて設計した。スタート時点ではAI専門家の支援が必要でも、そこからの調整や試行は現場担当者でも挑戦できるレベルの容易な仕様となっている。
今後は、画像だけでなく動画も活用し、作業手順から逸脱した動作に対してリアルタイムで警告するAIエージェントの他、作業映像から報告書の自動生成などの機能も開発していく。
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