万博会場では全周2キロとなる会場のランドマーク「大屋根リング」に、そのYOI-enシステムが使われている。
会場を一望でき、多数の来場者らが行き交う2階のスカイウォークエリアには約600台のフルカラースポットライトを1.2メートル間隔で設置し、1台ごとに遠隔で色温度、カラー、明るさを調整し、夜の会場散策のムードを盛り上げる。
通常は白色系の光がゆるやかに変化する「呼吸」という演出を取り入れ、徐々に移ろう光の加減で落ち着いた夜の雰囲気を形成。一定時間で季節ごとの特殊な光のパターンを盛り込み、訪れるたびに違う演出が楽しめる趣向だ。閉幕の時間が近づくと、アフォーダンスライティングの手法で、観客の移動を促すように光が徐々に点滅し、来場客の安全な移動をサポートする。
照明の制御は、スポットライトのコントローラーがLANを介してYOI-enのシステムと接続し、遠隔コントロールを可能としている。大屋根リングと会場をつなぐエレベーターまでの通路ではカメラによる人検知センサーをシステムとつなげ、明るさを調整して安全に来場者を誘導する。
パナソニック製照明は他にも、大屋根リング2階の2段屋根に42台のフルカラー投光器を設置するなど、夜間の会場を彩っている。
パナソニックのパビリオン「ノモの国」は夜間になると、建物周辺で光や音、ミストを組み合わせた幻想的な演出を展開している。
パビリオン外観を照らすファザード照明器具は、フルカラー投光器75台で構成。建物の外装膜全体を均一にYOI-enのシステムで照射するとともに、光を細やかにコントロールして、夜空に浮かび上がるシャボン玉のように繊細な演出を可能としている。
巧みな光の変化の裏側には、外環境を分析して状況に合わせた演出を可能とするシステム構成に秘密がある。大林組のスマートビルOS「WELCS Place(ウェルクス プレイス)」とYOI-enが連携し、IoTセンサーで取得した温湿度や雨量、風速の環境データをYOI-enに提供する。環境データを読み取り、その変化に合わせてスピーカーや噴霧器、照明器具を制御し、独特な雰囲気を形作っている。
パビリオン演出では教育面への貢献も果たしている。事前の小中高生向けワークショップで照明演出に連動したプログラミング学習用ソフトを用い、デモデータを作成した。データをYOI-enのシステムに入力し、会場内で定期的に実演。ワークショップの参加者らも訪れ、自身が携わった演出を体験し、次代を担う人材育成にもつなげた。
YOI-enの導入としては大阪・関西万博が過去最大規模となる。今博覧会で得られた知見をもとに、さまざまな場所での普及に力を注ぐ方針だ。
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