竹中工務店は、大阪・関西万博で実施設計・施工を手掛けた23施設に複数のCO2削減技術を導入し、新築時の温室効果ガス排出量をCO2換算で6020.8トン削減した。これは、万博会場面積の約4.4倍に当たる684.2ヘクタールの森林が1年間に吸収するCO2量に相当する。
竹中工務店は2025年4月10日、実施設計・施工を担当した大阪・関西万博のPW西工区内23施設にさまざまなCO2削減技術を適用し、新築時に排出する温室効果ガス(アップフロントカーボン)をCO2換算で6020.8トン削減したと発表した。
この削減量は大阪・関西万博の会場面積(155ヘクタール)の約4.4倍に当たる684.2ヘクタールの森林が1年間にCO2を吸収する能力に相当する。
竹中工務店はアップフロントカーボン削減に向け、地上部建屋でのリユース資材活用、CO2排出量低減材料の採用、エネルギーや資源消費の抑制に取り組んだ。
まず6カ月間の会期後の解体を見据え、大和リースと共同で、総床面積の約73%をプレファブ工法によるリユース資材で計画した。上部躯体に加え、外壁、屋根、建具に再利用可能なプレファブ部材を採用している。従来規格の1.8メートルモジュールを用いて実施設計を調整し、適用範囲を広げることで、多くの部材をリユース可能にした。パビリオン展示に求められる無柱の大空間を実現する新たなモジュールも開発。さらに、プレファブ部材を利用して外壁にモジュール規格外のサイディング材を取り付けられるディテールを考案し、外装デザインの自由度を確保した。
EXPOメッセ棟の基礎の一部には「CUCO-建築用プレキャスト部材」を採用。CUCO-建築用プレキャスト部材は、 ECM(Energy/CO2 Minimum)セメントによるCO2削減技術、再生微粉や再生骨材にCO2を固定化する技術(CCU材料)、特殊混和材LEAFをセメントに混合して硬化後にCO2を吸収する技術の3つから成る。
資材製造過程や施工過程のCO2排出量が少ない低炭素型材料として、ダンボールダクト、アルミケーブル、アルミ冷媒配管、水道用高性能ポリエチレン管を活用した。軽量化や簡易な施工方法により、施工段階の省人化や省力化も実現する。折り畳んだ状態で運搬するダンボールダクトはトラックの運搬回数を削減でき、資材運搬に関するCO2削減効果も見込まれている。
また、夢洲の埋め立て地盤の特性を把握し、工事期間を含めた1〜2年程度の建物使用期間中に生じる沈下を想定した上で、周辺地盤との沈下差を許容した「空隙を設けない浮き基礎」をほぼ全ての建物で採用した。コンクリートや鉄筋などの資源と掘削土量を最小限に抑えながら、建物と周辺地盤との間に沈下差に追随できる仕組みを採用することで、沈下が生じた場合でも建物の使用に支障が出ない構造とした。
大林組は今回「サーキュラーデザインビルド」をコンセプトに、従来のスクラップ&ビルドから「つくる」「つかう」「つなぐ」をキーワードとして、リユース、リサイクル、アップサイクルなどにより資源投入量と廃棄物の削減を図った。
竹中工務店が提唱するサーキュラーデザインビルドとは、建築物の設計・施工段階から、リユースやリサイクル建材の選択、将来の解体を考慮した設計手法の検討などにつなげる考え方と、その実践に関する取り組みを称するもの。
2025年日本国際博覧会協会が公表する「持続可能な大阪・関西万博にむけた方針」の目標の1つに「Planet(生態系、環境):国際的合意(パリ協定、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンなど)の実現に寄与する会場整備/運営を目指す」ことが掲げられ、3R(リユース、リデュース、リサイクル)の積極的な活用が求められている。
竹中工務店はこの方針を基に、実施設計者・施工者として所要の性能や品質を確保しながら、資源循環と脱炭素に貢献する施設を目指して実施設計・施工を進めてきた。万博の会期は半年と短期間で、相対的にアップフロントカーボンを含むエンボディドカーボンの割合が増えることから、今回、アップフロントカーボンに着目してCO2削減量を算出した。
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