SLAMでは自らの位置と目印の位置の両方が不明な場合、下図のように誤差も含まれますが自分と目印の位置を同時に推定していく問題を解くことになります。また、それを通して周辺の地図も作成していくこともできます。連載23回でも取り上げた画像やレーザー計測がよく用いられ、画像の場合は「Visual SLAM」、レーザーは「LiDAR SLAM」と呼ばれます※4。
※4 BUILT “土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(23)「点群とAIを土木の設計や維持管理に応用する最新の技術動向【土木×AI第23回】」
1980年代から、惑星探査ロボットの位置を周辺の画像で推定することが試みられてきました※5。SLAM技術は、米国防高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)による自動運転車レースの「DARPAグランド・チャレンジ」で2005年に優勝したスタンフォード大学などの「Stanley」で良好な成績を納めたことが契機となって、広く注目されるようになります※6。現在では掃除や配膳のロボットにも取り入れられ、日常に溶け込む身近な技術になっています。土木の現場でも、運搬ロボット※7、自律飛行によるドローン点検への適用※8、9などの事例があります。
画像のAI技術が進むにつれ、Visual SLAMにAIを取り入れる研究開発も進んでいます。少数の画像から高精度の3次元形状を生成する深層学習ベースの手法「NeRF(Neural Radiance Fields)」に関心が集まっています。3D空間内の点座標(3次元)と視線の方向(2次元)の5次元の入力に対して、対応する点の色(RGB値)と密度を出力するように学習することで、リアルな3次元シーンを作成する方法です。
下図の上のような実際の構造物に対し、NeRFを適用して、撮影していない視点からの画像を生成したのがその次の図です。周辺の環境も含めて鮮明に再現できていることがわかります。NeRFをSLAMに取り入れることで、形状としても画像としても高い精度を出せることが報告されています※11。
画像やレーダーなどの計測で地図を作成し、同時に自己位置を求めるSLAMはGNSSが利用できない場合などに有効な方法です。また、SLAMで得られる周辺環境の三次元マップも点検や施工管理への適用が試みられています。AIとの融合が進むにつれて、ますます精度が向上し、ユースケースも広がっていくものと期待されます。
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