連載第23回は、土木領域の設計や施工、維持管理などで活用が広がっている「点群」にスポットを当てます。点群から形状を抽出する方法や施工前後の比較、深層学習を用いた「セマンティックセグメンテーション」で地物を分類する研究などを紹介します。
設計・施工や維持管理の現場で、「点群」を目にすることが増えています。点群は、実際のインフラ形状を点の集合として、3次元で把握することができます。
点群データの取得方法には、大きく分けて「レーザー計測」と「写真測量」の2種類があります。レーザー計測では、レーザー光の反射によって対象物までの距離を測り、3次元座標を得ており、「LiDAR(Light Detection And Ranging)」とも呼ばれます。
また、写真測量では、対象物の写真を複数の位置や方向から撮影し、共通の特徴点をひも付けて、撮影位置と方位角を推定することで3次元形状を構築しており、「SfM(Structure from Motion)」とも言われています。レーザー計測は、比較的高価な計測機材を要する一方、写真測量は市販のデジタルカメラでも可能です。ただし、レーザー計測と比較すると精度が劣る傾向があります。
点群データを一見すると、建物や道路など、計測対象が分離しているように見えますが、実際は色がついた3次元座標の点が無数に集まっている状態です。下図左は、鋼桁の点群の例です。このままでも、3次元で形状を可視化することができますが、施工や維持管理に適用するには、部位や部材などを分離して抽出する必要があります。鋼板やボルトなどの数量集計や断面計算を行うには、下図右のように要素を抽出して、面で表したサーフェスモデルなどが用いられます。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 AI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
文献2では、点群から形状を抽出する方法が解説されています。下図はその1例で、左図の例では、赤い点で示した高さ方向のz座標の値が小さく、かつ面の垂直方向である法線ベクトルがz軸に平行という特徴を持つグループを地面として抽出しています。図の右の3つの図は、各面の法線ベクトルが平行の領域を順次広げ、法線ベクトルが急に変化するところまでを同じ面と認識し、面を分離する方法を表したものです。
※2 「点群データ処理アルゴリズムの総括および土木分野での活用事例と展望」日高菜緒/AI・データサイエンス論文集4巻3号p301-309/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2023年
文献3では、点群データの施工への適用例が紹介されています。下図左は、施工前後の点群を比較して、施工前に対して施工後が高さ方向にプラスであれば赤色、マイナスであれば青色、変化が無ければ白色で表示しています。それによって、進捗状況を分かりやすく可視化できます。また、下図中と右は、施工前後の盛土の赤枠内の体積を点群データから算出している例です。
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