今回は、建設現場のDXに欠かせないデジタルツインとAIの組み合わせを深掘りし、熟練者の技能をデジタルツインでモデル化やフィジカルとサイバーの両空間融合で最適な施工管理などの最新研究を採り上げます。
AIの高度化やデジタルツインの発展を背景に、建設現場のDXも進んでいます。BIM/CIMの原則適用も始まり、基準の整備も進められています※1。現場の施工状況や地形をデジタルツイン上に再現し、AIなどと組み合わせることで、DX推進の大きな原動力となることが期待されています。
※1 国土交通省「BIM/CIMポータルサイト BIM/CIMの基準/要領など」
工事現場の安全性を確保するAI活用も進んでいます。文献2では、工事現場の定点カメラから、車両と人を検出して、さらに人の姿勢も推定しています※2。誘導員が車両を認識していなかったり、誘導員が車道に出ていたりするリスクが高い状況をAIが検出しています。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
現場作業の合理化や効率化にもデジタルツイン技術が貢献しています。床版平たん性検査では、下図左に示すように、3メートル直線定規を一定間隔で設置し、定規と床版上面の距離を測定して凹凸値を算出して記録しています。
文献3では、橋梁(きょうりょう)コンクリート床版平たん性の検査に地上型3Dレーザスキャナーが適用されています※3。下図左のようにレーザースキャナーを移動させながら複数回計測して検査し、得られた3D点群を高精度で自動結合して、床版の平たん性データを取得しています。
※3 「橋梁コンクリート床版平坦性自動検査システムの開発」山崎文敬,前田幸祐,柿市拓巳/AI・データサイエンス論文集5巻1号p26-32/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年
また、文献4では地形の点群を利用して、AIと組み合わせることで、油圧ショベルの転倒予測に取り組んでいます。
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