建設DXの潮流によって、建設現場をヴァーチャル空間にも再現する“デジタルツイン”の活用が進んでいます。リアル空間をドローンやレーザースキャナーなどで3D化するときに欠かせないのが、位置情報を正確に取得する技術です。そこで今回は、Google マップやカーナビ、スマートフォンなど一般社会にも普及したGNSSと、センチ単位に精度を上げたRTK-GNSSといった「測位技術」を改めて解説します。
建設DXが進み、ドローンや施工ロボット、現場のデジタルツインや点群活用などが広がっています。その際、重要となるのが、自らの位置を計測する「測位」です。基準点や目印がある場合は、相対的な位置関係を計測することで測位が可能になります。測位技術として、衛星を基準に地上の緯度や経度、高度を求める「GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)」が幅広く使われています※1。
GNSSは、ドローンの飛行経路の設定やドローンからのレーザー計測などに活用されています※2。また、締固め機械にGNSSを導入することによって、施工と同時にその位置を計測/記録することができ、面的な管理が可能となります※3。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
農業の例になりますが、文献4では収穫機に取り付けたカメラから撮影した動画にAIを適用して収穫個数を求め、それをGNSSによる位置情報を統合することで、下図のように収穫量の分布を求めています※4。
地図を東西南北に升目状で区切って、座標で位置を表すという考え方自体は古くからあります。織物の縦糸を表す経糸と横糸を表す緯糸になぞらえて、地図上の南北の線は経線、東西の線は緯線と呼ばれ、位置の座標が緯度/経度となります。
それでは、緯度/経度はどのように知ることができるのでしょうか。古来、位置が定まっている天体が目印とされてきました。緯度は、北極星の高度から求めることができます。経度は、東西方向に地球が回転するので、定まった時刻での天体の位置を知る必要があります。そのため正確な時計が経度計測の鍵になりますが、「クロノメーター」と呼ばれる経度を測るための時計が開発されるのは、18世紀を待たなければなりませんでした。
現代のGNSSの目印は人工衛星です。衛星には高精度の時計が搭載されており、衛星からの電波が測定したい点に届くまでの時間を計測することで、衛星からの距離を求めます。そして、4個以上の衛星との距離と軌道情報から位置を算出しています。ただし、それだけでは、衛星の時計や軌道情報の誤差によって、10メートル程度の差が生じると言われています。
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