応用地質からは統括部長の吉田真治氏が登壇。日立製作所と連携して提供する地中可視化サービスは、レーダー探査装置などをもとに既設埋設管の3Dデータを取得し、地下と地上を3Dで可視化する。3D化により、管路の表示や計測に加え、埋設ルートの検討や支障物による干渉の把握、出力データの設計活用などの支援が可能になる。誰もが理解しやすい形で示すことができるため、打ち合わせがしやすかったり、台帳とのズレが可視化できたりと業務効率化につながっている。
吉田氏は「さまざまな角度から地下情報を見やすく提供することで、工期の短縮とコスト削減に貢献したい」と目標を示した。
日立製作所はこうした3社が持つノウハウを活用し、社会インフラ維持管理の高度化へと力を入れる。地下インフラに関するそれぞれの情報をデータベース化し、社会インフラのDXを進めるプラットフォームを構築して、インフラ維持管理の効率化を大幅に向上させようとしている。プラットフォームは4社からスタートし、将来は複数のインフラ事業者間でのデータ連携と情報共有を可能にし、地下埋設物の正確な位置情報や属性情報が常に一元的に把握できるようにする。
さらに先を見据え、レーダー探査による地中の可視化だけでなく、ドローンや点検カメラなど、多様な技術を統合して都市の地下と地上のデータを網羅的に収集し、インフラ管理に生かす「社会インフラ保守統合プラットフォーム」の計画も進めている。プラットフォームは、通常時だけでなく災害時の早期復旧にも貢献するシステム設計で、点検や施工の際には担当者が簡単にデータを参照できる。
しかし、データ移行に伴い、各社の情報セキュリティの問題や業務システムの違いや探査精度も課題となる。NTTインフラネットの古賀氏は、「インフラ事業者にはそれぞれ守秘義務があり、公開できない情報がある」とした。アイビックの押田氏は現況の測定精度の問題点を指摘し、「場合によっては測定器の精度以上が求められる場合もある。測定結果と現実を比較するデータを取得して精度を上げていくことが大切だ」と語った。
ただ精度向上は日本特有の地形に縛られている面もある。応用地質の吉田氏は、「日本は地形が複雑なため、場所によってレーダーの精度が変わることは織り込んだ上で実装しなければならない」と補足説明した。
地中可視化サービスに関しては、今後は4社の強みを結集し、正確な地下埋設物情報の取得やBIM/CIM利活用支援などを展開していくことで4者は同意した。竹島氏も展望として、「情報を一元管理する中で、漏水などの見えなかった部分の可視化もできるはず。少子高齢化で人も予算も厳しくなる中で、効率的な修繕ができる盤石な体制を整えたい」と期待を込めた。
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