インフラの老朽化や激甚化する災害に対応するため、上下水道管路の耐震化や道路の無電柱化が全国で進められている。しかし、地下埋設物のインフラ工事は地下既設管などの把握が不可欠で手間や時間がかかり、インフラ事業者は慢性的な人手不足のために工事進捗で支障を抱えている。こうした課題解決に向け、日立製作所とNTTインフラネット、アイレック技建、応用地質の4社が手を組み、新技術を用いた地中可視化サービスの提供に取り組んでいる。
近年、インフラの老朽化が社会課題となっている。数多くのインフラ施設が一斉に更新時期を迎えているとともに、災害の激甚化に伴い被害を抑止するには適切な保守は急務だからだ。しかし、インフラの保守を担う人材は慢性的に不足しており、手が回らなかったり、後進へのノウハウ承継も課題を抱えていたりと対応すべき点は多い。
特にインフラ保守で課題なのは、地下埋設物の現況把握にある。全国で工事が進んでいる無電柱化などの事業でも、地下埋設物を把握しなければならないが、現場ならではの大きな壁が立ちはだかっている。
そこで日立製作所と応用地質、エヌ・ティ・ティ・インフラネット(NTTインフラネット)、子会社のアイレック技建の4社が協業し、新技術を用いた「地中可視化サービス」の提供を開始した。2024年9月4日に日立製作所グループ最大規模のイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2024 JAPAN」で、4社が最新の地下埋設物把握の現況と、これからの未来の方策を話し合った。
トークセッションでは日立製作所 本部長 竹島昌弘氏がまず、地下埋設物調査が抱える課題を説明した。
地下埋設物の調査では直接目視による現況確認ができないため、ガスや電気、通信など複数のインフラ事業者に管理図面を照会しなければならない。それでも、最新の状況が反映されているとは限らず、実態と異なる場合があり、計画通りに管路整備が進まないケースもある。現場からは情報収集工数や試掘工数の削減、配管損傷事故や工期遅延の回避を求めるニーズが強い。
竹島氏は「地下埋設物の調査では、余計なコストや大きな事故につながりかねないリスクを抱えている。あらかじめ把握できれば、より効率的な工事を行うことができるはず」と指摘する。
こうした課題解消のために、日立製作所と応用地質は地下埋設物の3次元位置情報を可視化し、一元管理する地中可視化サービスを提供。NTTインフラネットとアイレック技建は無電柱化の推進、ICTを活用した社会インフラ分野の課題解決、非破壊探査事業の推進の技術の3点で連携し、さらなる地下インフラの整備推進を目指している。
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