こうして選定されたワークサイトの各現場への展開を、東急建設は段階的に進めていった。2021年4月からは、導入検討や準備の段階として、利用前の機能を検証。MCデータプラスとも連携しながら、不具合の洗い出しや改善を図った。
同年7月からは第2段階に移行し、数現場でトライアル運用に着手。導入しやすい中規模の現場で、協力社数も比較的少ない時期を選んで実施したが、操作する作業員のITリテラシーのレベル差やスマホ利用度の違いなどで職長の利用定着が難しく、逆に現場負担が一時的に増加することもあった。そこで、協力会社向けの説明会や職長への周知徹底を敢行。2021年12月から順次、全国展開を開始し、2023年度中には社内全現場でのワークサイト利用を目指している。
続いて石田氏は、現在の現場でのワークサイトの運用状況を説明。東急建設では、作業打ち合せ書と安全衛生ミーティング日報(KYシート)の2種の帳票を用いて、作業間連絡調整を行っているが、従来はシステムで作成し、その後は紙ベースで手書きによる記入、追記、修正で運用していた。
その点、ワークサイト導入後は、作業打ち合せ書への記載が必要な各項目を事前に協力会社の職長にスマホで入力してもらうように変更し、紙依存からの脱却を図った。また、ワークサイトの利点として、必要項目を柔軟に後で追加できるため、統一書式をシステムの制約に合せて変更する必要もなくなった。
さらに、2種の帳票に同じ内容を記入する場合でも、一度の入力で2種類の書類に反映されるようになったことで、同一内容を双方に手書きしたり、齟齬がないかを確認する必要もなくなり、大幅な業務効率化が達成された。
ワークサイトの導入により、東急建設における作業間連絡調整の流れは、いまや大きく変わろうとしている。現状ではまだ、作業前々日に行われる元請け側の登録作業からスタートしているが、将来は作業前日に、協力会社の職長が作業内容を登録するところから始められるようにしていく計画だ。実現すれば、作業前日に、各協力会社の職長が登録した情報が出そろったところで、東急建設の社員が内容を確認し、その上で各社と作業間連絡調整の打ち合せを行う業務フローへと変わることになる。打ち合せでは、会議室などでワークサイト画面をモニターに投影して、各社職長に内容を確認して翌日の作業が確定する。
まさに、ワークサイトにより、作業打ち合せ書の作成だけでなく、システムを活用して効率的に会議を進める基盤が整いつつあるといえるだろう。
最後に石田氏は、今後のワークサイト活用について、展望を示した。当面は、ワークサイト利用現場での定着を目指し、利用した協力会社が別の現場でもスムーズに運用できるように基盤を整えていくことに注力する。そこでの課題は、システムの使い勝手や機能で、操作経験者からの意見や要望を集め、システムへ反映させ、ユーザーインタフェースの改良などといった細部の修正も進め、その後は、協力会社間でのワークサイトの知名度アップを図っていく。「自分たちにとって、今こそがスタート地点なのであり、これからの発展をMCデータプラスとともに歩んでいきたい」と力強く述べて、石田氏は講演を終了した。
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