清水建設は2020年10月から、日本国内の現場で帳票類や作業員の勤怠管理をデジタル化していくことを決定した。また、帳票類のデジタル化などで取得した情報は、建設業における担い手の確保や育成のためにも活用していく。
清水建設は2020年9月2日、現場管理業務の効率化を目的に、日本国内で10月以降に新規着工する現場を対象に、作業員の入退場管理や作業日報、工事日誌、作業指示書、安全環境日誌など、日々発生する帳票類の処理をデジタル化することを発表した。
各業務のデジタル化には、建設業向けのクラウドプラットフォーム事業を展開するMCデータプラス(MCDP)のシステムを活用する。システムは、清水建設がMCDPに提供した現場運営のノウハウが反映されており、業界内に広く普及することが期待される。
システムを利用することで、作業日報と作業指示書だけを例にとっても、今後1〜2年の間に、紙の使用量を最低でもA4用紙換算で年間約1000万枚減らせ、2万時間以上の処理時間削減を実現する。また、業務のデジタル化は、現場勤務者にも時間や場所を問わない多様な働き方をもたらす可能性があり、コロナ禍においてはデジタル化による対面業務の機会減少は感染防止にも貢献する。
デジタル化の手順は、まず2020年10月から、作業員の入退場管理を先行してデジタル化する。入退場管理には、MCDPが提供する労務・安全衛生関連の帳票管理クラウドサービス「グリーンサイト」の付属機能である通門管理システムを用いる。
通門管理システムにより、グリーンサイトに登録されている作業員情報にひも付けされたQRコードを活用し、個々の作業員の入退場時間や入場日数などの就労履歴を管理する。作業員は個々に付与されるQRコードを入退場ゲートの読み取り機にかざすだけで、就労履歴データを蓄積できる。
帳票類のデジタル化は、2020年1月から順次行う。MCDPが提供する作業間連絡調整クラウドサービス「ワークサイト」により、帳票類の作成と承認業務をデジタル化する。結果、印刷した紙ベースでの承認業務を無くし、ペーパーレス化を進める。
さらに、就労履歴と帳票類のデジタルデータを連携・融合させ、現場における管理業務の生産性を高める。例えば、就労履歴と作業日報のデータを連動させると、協力会社の出面の集計・請求や清水建設の承認、有能技能者に対する手当ての請求・承認などの業務を円滑に処理できるようになる。
また、工事日誌に記録された工事内容(出来高)と就労履歴データから得られる人工(工事の実施人数)を連携させると、職長など各技能者や作業員の適正な評価が行える。
なお、MCDPが提供する各種クラウドサービスのフル活用は、協力会社が所属する作業員の情報をグリーンサイトに登録することが前提となる。
グリーンサイトは「建設キャリアアップシステム(CCUS)」と連携しており、作業員の情報が両サービスに登録されると、通門管理システムに記録される就労履歴がCCUSにも転送される。
CCUSとグリーンサイトで就労履歴などのデータ管理を行うため、清水建設は協力会社に対して、両サービスへの未登録作業員に対して情報登録を要請する。CCUSへの登録が進むと、作業員の公的資格や社会保険加入状況、現場の就労履歴、建設業退職金計算などの管理業務もスムーズに進められるようになる。
今後、清水建設は、協力会社と連携し、早期にグリーンサイトとワークサイトを全現場に展開するとともに、引き続き、現場管理業務のデジタル化を推進する。また、取得したデータを利用し、作業員に対して、キャリアのフォローや処遇改善などを進めていく。
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