大和ハウス工業では、「新・担い手3法」に対応すべく、その第一歩として、建設キャリアアップシステムを導入し、顔認証システムをベースにしたグリーンサイトによる入退場管理の積極的な導入を進めている。将来は、現場作業者の管理を無人化することで、管理コストを減らし、その余剰をデジタル技術に分配し、建設業の処遇改善や給与アップにまでつなげることを目指す。
建設業界に特化したクラウドサービスプラットフォーム「建設サイト・シリーズ」で知られるMCデータプラスは、ユーザーミーティングを2022年2月に、YouTube上でライブ開催した。当日は600余人が参加し、建設DXをテーマとする約3時間のWebセミナーに聞き入った。
本稿では、セミナーの中心となった建設業大手ユーザー4社による建設サイト・シリーズの運用事例を各回に分けて紹介していく。
4社のユースケースで先陣を切って登場したのは、ハウスメーカー大手の大和ハウス工業。同社の上席執行役員で、技術統括本部 副本部長も務める河野宏氏は、「大和ハウスが目指す未来の建設現場」と題し、デジタルコンストラクション構想と現場管理のデータ連携にフォーカスして解説した。
河野氏はまず、建設業界の現状を概観し、喫緊の課題として、「建設業界の人手不足を含む働き方改革」「増加・大型化する災害や異常気象への対応」の2点を挙げ、それぞれに対する大和ハウスの姿勢を示した。そして、人手不足に関わる最新の取り組みでは、2019年6月に成立した「新・担い手3法」への対応を紹介。
新・担い手3法で示された改正のポイントは、「働き方改革の推進」「生産性向上への取組」「持続可能な事業環境の整備」の3点。このうち働き方改革では、「工期の適正化」と「現場の処遇改善」を目標としている。具体的には、適正な工期とリードタイムの確保を推進し、2021年度からは4週8休に着手。現場の処遇改善では、下請け代金のなかでも、労務費相当分の現金払いにも対応している。
生産性向上については、技術者に関する規制の合理化策として、監理技術者の専任緩和に注力。後述するスマートコントロールセンター(SCC)やICT機器を活用した実験をスタートさせており、業界団体や国に対する提言も行っている。
上記以外にも大和ハウスでは、建設業の発展には「地域の守り手」たる中小建設関連企業の育成と共存共栄が不可欠との考えに基づき、「建設現場における労務管理の徹底」と「施工店への処遇改善」にも向き合っている。そのために欠かせないツールが、「グリーンサイト」と、「建設キャリアアップシステム(Construction Career Up System:CCUS)」だ。
グリーンサイトは、グリーンファイル(労務・安全衛生に関する管理書類)を手軽にクラウド上で作成できるMCデータプラスが提供するWebサービス。一方のCCUSは、建設業界の主要団体が加盟する建設業振興基金が運用し、建設技能者の資格や社会保険加入状況、現場の就業履歴などを一元管理する管理システム。グリーンサイトは、必要な情報をCCUSに送り、CCUS上での入力の手間を省く「CCUSデータ連携サービス」を搭載しており、双方のデータ連携を実現して管理業務の手間削減に役立っている。
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