現状で大和ハウスの協力会5000社余りのなかでは、グリーンサイトは97.7%、CCUSは89%が既に加入済み(ともに2021年12月末現在)で、今後も優秀技能者への認定制度などで施工店の処遇改善の働きかけと併せて、さらなるグリーンサイトへの加入とCCUSへの移行を押し進めていく。
ここまで紹介した大和ハウスの取り組みの基盤を支える1つが、同社が2019年から進めている「デジタルコンストラクションプロジェクト」である。これは、技術者や技能者の減少に応じた同社の対策の柱で、建設プロセスのデジタル化により、「現場の無人化/省人化」を目指す全社的な方針だ。
河野氏によれば、社内では5つのワーキンググループ(WG)を設置。管理・監理の無人化・省人化、施工の無人化・省人化、設計の無人化・省人化、次世代工業化システム──の5つのWGが実現に向けて、システム構築や人材育成などを行っている。
大和ハウスの住宅事業における現場管理の無人化は、レベル0(従来通り)から最終目標のレベル5(完全な現場監理無人化)まで、段階的に進めていく計画だ。現状では、レベル1(管理業務支援)に相当する、物件ごとの多様な情報を可視化するポータルサイトや複数現場のデータを見える化したダッシュボード、遠隔管理システム「D-Camera」の開発に着手しており、既にレベル2(部分的管理業務自動化)の移行しているといえる。
既に現在、遠隔での画像解析やAI自動判定の運用は現場適用が始めっており、品質管理項目の70%まではAIによる遠隔制御が可能となった。今後は、レベル3(平常時現場管理無人化)を実現すべく検証・実証を進めていくが、関係法令のクリアも必要となるため、業界団体や協業各社を通じて積極的な提言を行っていく。
ちなみに、遠隔管理システムのD-Cameraは、施工中の4500件のうち67%に導入が完了し、各物件の情報を可視化する物件ポータルサイトについても住宅系に従事する社員約2200人と協力会社が使える環境が整えた。
さらに、遠隔管理の拠点となるスマートコントロールセンターも、全国12カ所に展開。大和ハウスとしては、D-Cameraと物件ポータルサイト、そして複数の情報を同時に表示するダッシュボードを組み合せたスマートコントロール基盤(SC基盤)の仕組みをベースに、各施工現場とスマートコントロールセンター、バックオフィスを結び、建設現場の無人化を実現することを目標に掲げる。
セミナー冒頭で紹介した業界の課題解決には、建設業をより魅力的な産業とし、若者が働きたいと思える仕事にする必要がある。それには当然、技能者の処遇改善や賃金アップが欠かせない。「管理の無人化/省人化により、管理コストを減らし、その余剰をデジタル技術者に分配することで、処遇改善や賃金アップにつなげたい」と河野氏は語る。その第一歩として、大和ハウスでは建設キャリアアップシステムと、また顔認証システムをベースにしたグリーンサイトによる入退場管理の導入を進めている。
今後もMCデータプラスとのさらなる連携強化を図り、「大和ハウスの現場で働く価値」のさらなる向上のためともに考え、改善しながら進んでいきたい」と力強く期待を述べ、河野氏のセミナーは終了した。
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