続いて杉浦氏は、BIM/CIM人材について「どのような人が良いのか?」「どう育てるべきか?」という質問に答え、「人材か人財か」「確保か育成か」「期間とコスト」をテーマとした。
まず1では、インフラ系プロジェクトの例を参照し、インフラ系は1プロジェクトで複数工事を含むことが多く、現場関係者も多岐にわたる。そのため、BIM/CIMツールをうまく扱う人はもちろん、複数現場のBIM/CIM運用を統括的にマネジメントする人も不可欠。つまり、3Dモデルを作成する「単なるモデラー」も「それを活用する人」も両方必要なのだ。
もちろん「単なるモデラー」と「それを活用する人」の両方を兼ねられる人はごくわずかしかいないから、実際は多くの人たちがプロジェクトを回し、あるいは育てていくしかない。そのため、互いが互いをリスペクトしながら、「自分たちでどこまで分かるのか」「分かるようにできるのか」の勉強を続けていくことが必要になる。
むろん人材/人財についても、皆で育てていければベストだが、さすがにいち企業内で行うのは費用対効果でも難しく、外部の業者などの協力も考慮すべきだろう。そのため、各社の取り組みでは、1、2、3をバランスよく進めていくことがカギとなる。
最後に、「人材の観点から注目すべきBIM/CIM事例」を問われた杉浦氏は、さまざまなパターンの事例を1つに絞りきれないことから、参照資料として「令和3年度BIMモデル事業 採択事業一覧」を採り上げた。
令和3年度の先導事業者型に採択された各社事例では、建物を作るプロセスでBIMを最も効率よく使えるヒントが示されている。さまざまな事例は、講演冒頭で紹介した国土交通省運営のBIM/CIMポータルサイトで公開されている。杉浦氏は、各事例の導入効果よりも、「データをつなげてプロセスで仕事を回す」ことの重要さを念頭に置きながら読んでほしいと要望した。
これまでのBIM/CIMの取り組みは、既存のプロセスに当てはめてBIM/CIMというツールをどのように使っていくか?が主題だったが、いまやBIM/CIMを最大限に生かすための“新しい建設生産プロセス”を考える時期が到来しつつある。多くの事例にも見られる「プロセス変革」こそが、今後は最も大事なポイントとなっていくだろう──と語り、杉浦氏は講演を終了した。
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