東亜建設工業は、ARAVが開発した重機の遠隔操縦/自動運転システムを、港湾工事の作業船上に設置したバックホウに試験的に導入した。
東亜建設工業は2025年8月7日、海上工事の生産性向上を目的に、ARAVが開発した重機の遠隔操縦/自動運転システムを、港湾工事の作業船(砂撒船)上に設置したバックホウに適用したと発表した。東亜建設工業によれば、同システムを難度の高い海上工事に試験的に導入するのは国内で初めてだという
砂撒船は護岸基礎の築造や漁場の海域環境の改善を目的に、海底に土砂をまく作業や窪地の埋め戻し作業などを行う。土砂投入作業時は、土運船を砂撒船に接舷し、2台のバックホウを使ってホッパーに土砂を投入する。
海底に均一な厚さで土砂をまくには一定量の土砂をホッパーへ連続的に投入する必要があり、バックホウ同士が接触しないようにオペレーター同士がタイミングを合わせて施工する必要がある。投入の作業時間と精度はオペレーターの技能や経験に依存していた。さらに、熟練オペレーターの減少により、自動運転による省人化や効率化が求められていた。
東亜建設工業は将来の砂撒船バックホウの完全自動化に向けて1人のオペレーターが2台のバックホウを遠隔で同時に操縦できる遠隔操縦/自動運転システムの開発に着手。これまで陸上で実用性を検証してきたが、今回、初めて動揺する砂撒船上のバックホウに適用し、実施工に試験導入した。
試験導入では、オペレーターが1台目のバックホウを遠隔操縦して土砂を掘削した後、自動運転に切り替えてホッパーに投入。並行して2台目を遠隔操縦して土砂を掘削し、1台目が初期位置へ戻ってきたことを検知した後、事前に掘削した土砂を自動運転で投入する。遠隔操縦と自動運転を繰り返すことで、1人のオペレーターが2台のバックホウを操縦できることを確認。オペレーターの削減に加えて、習熟度に左右されない効率的な施工が実現できる可能性が示された。
海上での自動運転には、波浪や海面変動などの外乱を考慮した姿勢制御が求められる。今回の検証試験で取得したデータは今後の自動制御システムの精緻化に利用する。また、シミュレーターを活用してバックホウ操作の習熟度を向上させることで、技能習得を促す。
将来は「重機の完全自動化」の実現に向けて、障害物検知やトラブルを判断する技術、緊急時の対応などについて、引き続き、実施工を通じて試験/検証を行っていく。
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