コンクリート締固めの程度や完了の判断は、「コンクリートの容積減少が認められなくなり、表面に光沢が現れて全体が均一に溶け合ったように見える」など、技術者の経験に基づく“目視判定”で行われるのが一般的です。そのため、締固め完了の判断は、専門技術者でも時間的な個人差があります。
文献3「AIによるコンクリートの締固め自動判定システム開発の試み」※3では、ビデオカメラで撮影した締固め時のコンクリート表面の画像を用いて、専門技術者の目視での判断に近い判定結果をAIで再現することが試みられています。下図では、締固め完了前を赤、締固め完了判定箇所を緑、継続して3秒以上の締固め完了判定となっている箇所を青で示しています。
構造物が出来上がった際には、形状が規定通りかどうかを検査する「出来形検査」が行われます。また、初期点検としてひび割れも測定します。こうした作業も、現在はメジャーを使って手作業で手間を掛けて行っているのが実態です。
そこで、台車にカメラを取り付け、位置や形状を自動計測し、ひび割れをAIで検出して、出来形検査と初期点検を同時に行うロボットシステムが開発されています。下図は、橋の壁高欄の検査ですが、壁高欄の内側と外側を、台車のアームに取り付けたカメラで同時に計測することで、作業の効率化や安全性向上につながります※4。
橋梁(きょうりょう)には、プレストレストコンクリートが用いられる場合も多いですが、プレストレス導入後にグラウトを注入する際に未充填(じゅうてん)があると、耐久性に悪影響が生じます。
そのため、衝撃力を加えることで発生した弾性波の特徴を利用する「インパクトエコー法」が未充填箇所の検出法の1つとして用いられています。弾性波は、橋内部の鋼材などの表面からも発生するほか、部材の形状や大きさの影響を受けるため,PCグラウトの未充填部を評価するには,経験と熟練が求められます。そこで、文献5の「PCグラウト充填判定への深層学習の適用に関する検討」※5では、弾性波のスペクトル特性をコンター図として可視化した画像を用いて、深層学習を適用することで,未充填箇所の判定が試みられています。
このように、コンクリート施工時の配筋、締固め、検査などの主要な局面でAIの導入による生産性の向上が検討されていることが分かります。また、AIによって、従来は定性的な判断結果などの記録のみであったものが、電子的なデータとしても記録が残ることになります。デジタルデータの蓄積や整備が進むことで、供用開始後には維持管理の基礎的な情報となり、構造物のライフサイクル全体を視野に入れたDXにもつながることが期待されます。
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