連載第4回は、AI活用が模索されているコンクリート構造物のひび割れ点検で、精度を上げるための手法について解説します。
橋などのコンクリート構造物の点検では、損傷の検出や記録の効率化、精度を向上させるためのAI活用の研究開発が活発に進められています。例えば、コンクリートによく見られるひび割れでは、長さや幅、単位面積あたりの密度などが診断基準となります。また、補修方法を決定する際にも、損傷範囲の寸法の情報が重要になりますから、定量的な評価が求められます。そのような場面にAIを導入することができれば、写真から損傷を読み取る作業の省力化に直接つながるため、実務的にも高い関心が寄せられています。
橋のコンクリート床版では、ひび割れの状態が健全性の評価で基本的な情報になります。下図左のコンクリート床版の写真に対して、ひび割れを検出した例が右図です※1。
コンクリート打設時の型枠跡や点検の際のチョーク跡、変色している部分などは検出されず、ひび割れが検出されていることが分かります。画素(ピクセル)ごとにひび割れかどうかを判別する「セマンティックセグメンテーション」が用いられています。コンクリートの表面状態や色調、光の当たり方などは多様で、それによって精度が左右される可能性がありますが、その影響を含んだ多くの画像について学習することで、汎用性や精度を上げていくことができるのが機械学習の大きな特徴です。
ひび割れにセマンティックセグメンテーションを適用するには、教師画像として、ピクセルごとにひび割れかどうかを分類するアノテーションが必要となり、多数の教師画像を作成するには労力がかかります。そこで、なるべく少ない数の教師画像で高い精度を実現しようとする研究も進められています。下の図は、元の画像に対して、平行移動や回転させたり、あるいは拡大縮小したりなどの画像処理に加えて、明るさを変化させるガンマ変換を組み合わせることで、教師画像の数を増やしてデータを拡張している例です。
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