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» 2021年12月07日 10時00分 公開

木造と防火制限:事務所建築物/一戸建て住宅について木の未来と可能性 ―素材・構法の発展と文化―(7)(1/2 ページ)

本連載では、一級建築士事務所 鍋野友哉アトリエ/TMYAを主宰する一級建築士の鍋野友哉氏が、近年環境に優しいなどの理由で関心を集める木材活用にスポットライトを当て、国内と世界における木造建築の歴史や最新の木造建築事例、木材を用いた構法などを紹介する。連載第7回となる今回は、建築基準法による特殊建築物では無い木造建築物の防火制限について採り上げます。

[鍋野友哉(鍋野友哉アトリエ主宰、お茶の水女子大学・法政大学兼任講師),BUILT]

 現在、国内では、ある一定規模以上の場合や特定の用途で建築物を建てようとすると、防耐火性能が求められます。そして、建築基準法上では、木造は他のRC造やS造に比べて防耐火上の厳しい設定がなされています。こういった点を踏まえて、連載の第6回では、現在の木造技術でどこまで防耐火性能を実現できるかということについて述べました。

 しかしながら、近年の建築基準法は、大規模建築物や市街地に対する安全性に配慮しつつ、木造建築物へのニーズに対応する形で大きく改正されたものです。建築基準法の改正に関して、一例を挙げると、木を表(あらわ)しにして建築することが可能な用途および規模が拡大されました。

 上記を考慮し、具体的にどんな用途の建築物がどの規模まで木造で、木を表しにして建築することが可能かについて、実例を通して考えていきたいと思います。

事務所建築物の防火制限

 まず、建築基準法では、不特定多数の人が利用する建築物やホテル、旅館、病床のある病院、人が寝泊まりする建築物あるいは可燃物が多く集まる倉庫などの用途については、「特殊建築物」として同法の2条2号や法別表第1などで定めています(表1)。

表1 特殊建築物の例

 特殊建築物は、耐火・準耐火の建築物や耐火構造を持つ建築物、避難時の対策建築物とする必要がありますが、どの建築物に当たるかは、用途や階数と面積で決まります。こういった構造制限に加えて、一部の用途については廊下の幅や避難経路の距離、排煙設備、内装制限などが必須となります。

 そして、特殊建築物以外で、多数存在する用途の建築物は、事務所と一戸建て住宅です。そこで、事務所建築物と一戸建て住宅について考えていきたいと思います。

 事務所と一戸建て住宅は、上述した特殊建築物のような制限が無いため、高さが16メートル以下で、地階を除く階数が3階を下回り、かつ延べ面積が3000平方メートル以下の場合は、耐火・準耐火建築物など以外の建築物として建てられます。

 上記は、建築基準法21条の規定で、以前は高さ13メートル以下かつ軒高9メートル以下に加え、延べ面積が3000平方メートル以下という条件でしたが、2019年の法改正によって条件は緩和されています。例えば、著者が愛媛県で設計したカネシロ本社ビルでは、法改正前でしたが、軒高9メートル以下かつ最高高さ13メートル以下の木造3階建てで設計することで、とくに防火の制限を受けずに建築することが可能でした(写真1-1,2)。

写真1-1 カネシロ社屋 外観
写真1-2 カネシロ社屋 内観
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