連載第5回は、近年、活発に研究が進められている車にカメラを取り付けて撮影した路面画像のAI解析で、どのような利活用が考えられるかを考察していきます。
道路は誰もが毎日使う身近なものですが、日々の利用に伴ってひび割れや凹凸などの劣化が進みます。また、ひどい場合には陥没などが発生し、安全な通行の妨げになる場合もあります。そこで、いち早く劣化や異常を発見し、補修などの対策を施すことが求められます。
道路路面の凸凹については、自動車の乗り心地を評価する定量的な指標があります。しかし、専用の計測器が必要となるので、頻繁なモニタリングは必ずしも行われていません。道路管理者によるパトロール/巡回目視や市民からの通報を受けての対応など、人手に頼る方法に依存しているのが実態です。
そのため、自動車にカメラなどを設置して走行時の路面画像を取得し、AIを適用して損傷を見つける研究開発が盛んに行われています。その際、画像が撮影された位置が分かるように、GPSなどによる位置情報を同期して計測するのが一般的です。
物体検出のAIは、走行時の画像に適用することで、ひび割れなどの損傷を検出することが可能です。下図上は、バウンディングボックスでひび割れを検出した例です※1。図のようにAIで損傷を検知し、記録することで、効率的に道路の状態を評価できます。道路には、マンホールや継ぎ目など、損傷や異常ではないけれど通常の部分と異なる箇所もあり、それらも損傷として検出してしまうと誤検出になってしまいます。そうした問題については、下図下のように、検出に分類を採り入れて学習していくことで、損傷とは別のものと検出することができるようになります。
舗装の画像にAIを適用する別の方法としては、画像をます目状に分割し、それぞれに分類を適用して、損傷の有無や種類を判別することも試行されています。下図は、4×4に画像を分割してひび割れの有無を分類した例です。
赤色の四角で囲われた領域が、AIと人の目視の両方でひび割れがあると判定した領域。緑色はAIのみ、黄色は目視のみでひび割れがあると判定した領域です。赤が正解、緑が誤検出、黄色が未検出(見落とし)に相当します。この表示方法で、AI判定の正誤や誤っている場合の誤り方が一目で判明しますので、誤った判定を再度学習して精度を上げることが試みられています※2。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.