【第7回】コンクリ施工の「配筋、締固め、検査」でも適用が進むAI、最新研究を紹介“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(7)(1/2 ページ)

連載第7回は、インフラ構造物のコンクリート工事を対象に、活用の場が広がるAI活用について、最新研究の論文を複数引用して紹介します。

» 2021年12月06日 10時00分 公開

 ここ数年は、AIの施工現場への導入も進められています。インフラでよく用いられている鉄筋コンクリートの施工は、鉄筋や型枠を組み立てて、コンクリートを型枠内に打設し、その後、締固め、表面仕上げ、養生という流れで行われます。

 鉄筋の配置や本数は、鉄筋コンクリートの耐荷力や性能に直結します。また、鉄筋の腐食を防ぐために、コンクリートの「かぶり」が必要となります。かぶりの厚さは基準で指定されていますが、規定のかぶりを確保するためにも、鉄筋が適切に配置されることが重要です。そのため、コンクリート打設前に、配筋の検査を行います。構造物の鉄筋は膨大な数に上り、現状ではテープメジャーなどを用いて人力で計測を行っているために、手間が掛かり、ミスも発生しやすい作業となっています。

 そこで、画像認識AI技術で配筋検査を行う新たな手法の研究開発が進んでいます。ここで引用する文献1では、ディープラーニングによる物体検出技術を適用し、“鉄筋同士が交差する交点の特徴”を学習させることで、鉄筋の配置を認識させる方法が報告されています※1。下図は、物体検出技術を用いた鉄筋の検出結果の例です。UAVまたは計測台車により、広範囲を一挙に撮影することで、配筋検査を効率化することが期待されています。

AIによる配筋検査結果 出典:※1

※1 「画像認識AI技術を用いたコンクリート構造物の配筋検査高度化」中野隆,柿市拓巳,前田晃佑,新井進太郎,角木啓太,中川大海,田村浩一郎共著/AI・データサイエンス論文集2巻J2号p749〜756/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2021年

 コンクリートの品質は、締固めに大きく左右されますが、締固めには熟練の技術が求められます。文献2「コンクリート締固め位置のリアルタイム解析システムの開発と現場試行」※2では、締固めに用いるバイブレータの位置に着目し、施工時の締固め箇所を3次元で正確に計測して、施工時間との対比で、どこをいつ締固めたかを定量的かつリアルタイムに把握するシステムが論文にまとめられています。

 このシステムでは、作業員のヘルメットに搭載したカメラで撮影した動画像から、現場に配置したARマーカーを検出することで正確に位置を検出できます。それによって、作業中に締固め不足を検知して、品質を改善することが可能となります。

バイブレータ位置とARマーカの配置状況 出典:※2

※2 「コンクリート締固め位置のリアルタイム解析システムの開発と現場試行」宇野昌利,仲条仁,今井龍一共著/AI・データサイエンス論文集2巻J2号p757〜764/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2021年

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