連載第7回は、インフラ構造物のコンクリート工事を対象に、活用の場が広がるAI活用について、最新研究の論文を複数引用して紹介します。
ここ数年は、AIの施工現場への導入も進められています。インフラでよく用いられている鉄筋コンクリートの施工は、鉄筋や型枠を組み立てて、コンクリートを型枠内に打設し、その後、締固め、表面仕上げ、養生という流れで行われます。
鉄筋の配置や本数は、鉄筋コンクリートの耐荷力や性能に直結します。また、鉄筋の腐食を防ぐために、コンクリートの「かぶり」が必要となります。かぶりの厚さは基準で指定されていますが、規定のかぶりを確保するためにも、鉄筋が適切に配置されることが重要です。そのため、コンクリート打設前に、配筋の検査を行います。構造物の鉄筋は膨大な数に上り、現状ではテープメジャーなどを用いて人力で計測を行っているために、手間が掛かり、ミスも発生しやすい作業となっています。
そこで、画像認識AI技術で配筋検査を行う新たな手法の研究開発が進んでいます。ここで引用する文献1では、ディープラーニングによる物体検出技術を適用し、“鉄筋同士が交差する交点の特徴”を学習させることで、鉄筋の配置を認識させる方法が報告されています※1。下図は、物体検出技術を用いた鉄筋の検出結果の例です。UAVまたは計測台車により、広範囲を一挙に撮影することで、配筋検査を効率化することが期待されています。
コンクリートの品質は、締固めに大きく左右されますが、締固めには熟練の技術が求められます。文献2「コンクリート締固め位置のリアルタイム解析システムの開発と現場試行」※2では、締固めに用いるバイブレータの位置に着目し、施工時の締固め箇所を3次元で正確に計測して、施工時間との対比で、どこをいつ締固めたかを定量的かつリアルタイムに把握するシステムが論文にまとめられています。
このシステムでは、作業員のヘルメットに搭載したカメラで撮影した動画像から、現場に配置したARマーカーを検出することで正確に位置を検出できます。それによって、作業中に締固め不足を検知して、品質を改善することが可能となります。
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