「2四半期連続で悪化、今後3カ月後も」日銀短観に見る建設業の景況建設業の人材動向レポート(38)

本連載では、ヒューマンリソシアが運営する「建設HR(旧ヒューマンタッチ総研)」が独自に調査した建設業における人材動向について、さまざまな観点で毎月レポートを発表している。今回は、建設業の景況について、日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)を資料に分析している。

» 2021年11月15日 10時00分 公開

 今回は、建設業の景況について、日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)を基礎資料に分析した。

 日銀の短観は、国内約1万社の企業に、四半期ごとに景気の現状などをたずねる調査で、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた業況判断指数(DI:Diffusion Index)で景況感を判断している。

建設業の景況感は悪化傾向が続く見通し

 日銀が公表した2021年9月の全国企業短期経済観測調査によると、9月の建設業の業況判断DIは、2021年6月の前回調査よりも2ポイント悪化してプラス10となった(図表1)。全産業平均、製造業ともに改善傾向が続いているなかで、建設業は2カ月連続の悪化となっている。コロナ禍前の2019年9月調査と比較すると、製造業はマイナス1からプラス5と、6ポイント改善しているが、建設業はプラス28からプラス10に、18ポイントも悪化している。

 また、3カ月後の12月は、9月よりもさらに10ポイント悪化して0になると予測されており、製造業のプラス2を下回る見通しだ。

【図表1 業況判断DIの推移】 出典:日銀「全国企業短期経済観測調査」より建設HR 編集部が作成

足元では大企業・中堅企業はともに改善するも、中小建設業は景況感が悪化

 企業規模別に建設業の業況判断DIをみると、「大企業」は前回の6月調査から2ポイント改善してプラス17となり、「中堅企業」は1ポイント改善して同じくプラス17と。一方、「中小企業」は4ポイント悪化してプラス6だった。足元では、大手・中堅ではなく、中小建設業で景況感が悪化してきていることが分かる(図表2)

 3カ月後の見通しは、大企業が4ポイント悪化してプラス13、中堅企業が15ポイント悪化してプラス2、中小企業は8ポイント悪化してマイナス2となっており、直近の四半期では改善傾向の大企業や中堅企業でも景況感が悪化すると予測されている。

【図表2 企業規模別でみた建設業の業況判断指数の推移】 出典:日銀「全国企業短期経済観測調査」より建設HR 編集部が作成

考察

 建設業の景況感は、2四半期連続で悪化し、今後3カ月後の見通しについても10ポイント悪化すると予測されている。このように景況感が悪化する要因として、2021年9月の建設技術者の有効求人倍率が6.25倍、建設技能工は5.32倍と厳しい人手不足の状況が続き、増加する工事に対応できないという危機感が根底にあるのではないだろうか。また、民間の建設投資に対する不透明感が、景況感にマイナスの影響を与えていると推測される(図表3)。

【図表3 雇用判断DIの推移】 出典:日銀「全国企業短期経済観測調査」より建設HR 編集部が作成

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建設HR

建設HRは、総合人材サービス事業を行うヒューマンリソシアが運営する「建設人事のお悩みに寄りそう」をコンセプトに、建設業界人のお困りごとに寄りそい、ともに向き合い、ときには半歩先の未来を提案するHRビジネス・パートナーとして、さまざまな記事などを発信するメディア。

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