近年は、社会インフラの維持管理やマネジメントへのデータ利活用も関心を集めています。下図は、多様なデータを統合化し、利活用する枠組みの例です。インフラマネジメントでは、下図の最左列に記されたように多種多様のデータが扱われています。図の右に向かうに連れて、オープンデータなどの外部データを含めて、相互に関連付けながら統合化し、蓄積・管理・活用していく様子が示されています。管理主体ごとに異なるデータ形式や表現に対応しつつ、目的に応じた分析や可視化を行うことで、下図最右列のような各種業務への利用へつなげることができます。
首都高速道路では、GISに紐(ひも)づけられた構造物の諸元や図面データ、施工記録、点検・補修記録などの基本情報に、3次元点群データを連携させたインフラプラットフォームを構築しています。それにより、3次元空間での構造物の現況確認、損傷や変状の把握に加え、現況図面の作成や設計・施工に関わるシミュレーションなどを行うことが可能となっています。下図は、点群データによる3次元空間上で、建設機械や点検機材などの現場配置検討のシミュレーションを行っている様子です。
また、阪神高速道路は、現実世界にあるさまざまなデータをロボットやセンサー技術で収集・蓄積し、サイバー空間でAIや大規模データ処理技術を駆使して分析・知識化を行い、人が最適な意思決定を行っていく「サイバーインフラマネジメント」という概念を掲げています※6。そこでは、現実空間にある橋やトンネルといった道路構造物の竣工図や設計計算書から、地盤モデルから構造モデルまで、実物と同じ性質・挙動を示すモデルをサイバー空間に再現する「デジタルツイン」と呼ばれる試みを進めています。下図は、デジタルツインモデルの各部材に、劣化・損傷などの情報を見える化した例です。
ここ最近は、国内の建設業界でBIM/CIMの進展とも相まって、地図やGISから3次元のモデルへとインフラのデータのプラットフォームは拡張されてきています。将来はプラットフォームの発展に伴って、AIの応用も進化し、DXを牽(けん)引していくことが期待されます。
★連載バックナンバー:
『“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト』
■第5回:道路画像のAI活用で何が分かるか、路面変状だけでなく冠水状態やスタッドレス装着も自動判定
■第4回:コンクリ構造物のひび割れAI点検で精度を上げるには?段階的手法の有効性
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