一体感および親密性の計測、数値化、評価プログラムは、抽象的で理解しにくい一体感と親密性を数値化する。
西氏は、「一体感とは、他の観客が視界に入ることで、感じられるものだと推定し、一体感の計測、数値化、評価プログラムでは、劇場の半球型3Dモデルに、座席や観客、舞台の3Dモデルを設置したものを活用し、各座席で観客が視野に入るかを調べられるようにしている。親密性は一体感の数値を客席数で割り算出する。コロナ禍では、密集の回避が求められているが、親密性の高さは観客同士の距離と関係ないため、今回のプログラムで、各来場者の間隔を保ったまま、親密性を増せる」と述べた。
照明配置評価プログラムは、照明の対象と光源の位置を立体的に計算し、劇場の半球型3Dモデルで評する。
「従来の劇場設計では、光源位置の評価は、施設の平面図や断面図、文献などを参考に決定していたが、パターン化された照明の配置では、現代の演出や照明、映像に関するデザイナーの要望に応えられなかった。しかし、照明配置評価プログラムは、多面的に劇場のライティングを検討可能なため、さまざまなデザイナーのニーズを満たせる」(西氏)。
劇場など計画支援VRシステムは、見え方総合評価プログラムなど各プログラムで取得したデータに基づき、劇場やホール、アリーナを3Dデータで可視化する。3Dデータ上では、自由な視点の移動や内装と外観の確認が行える他、指定した座席からの見え方や周辺に座る観客の身長による視野の変化、手すりの位置をチェックできる。
パナソニック LS社の松尾氏は、「劇場など計画支援VRシステムで作成した3Dデータは、劇場の利用者がスマートフォンとPCで座席を予約する際に舞台の見え方を確かめられるツールとしても活用する見通しだ」とコメントした。
View-esTのターゲットは、全国で約3000施設ある劇場のうち、有料のイベントが開かれる大型劇場の約600施設。パナソニック ライフソリューションズ(LS)社は、大型劇場が約30年ごとに改修や新築されている現状を考慮し、1年間あたり20件の大型ホールでView-esTの導入を目指す。全国で2万件を超えるスポーツ施設の中で、有料のイベントが行われる約600施設にもView-esTを訴求する。
今後の展開について、パナソニック LS社の松尾氏は、「View-esTは当面、資産価値と利便性の向上を支援するツールとして機能させ、その後、劇場のブランディングと施設のDXを促進するソリューションとして使用の機会を増やす予定だ」と明かした。
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