飛島建設技術研究所などの研究グループは、福井県内で80年以上前に地中に打設されたマツ杭4本を調査し、大きな劣化が生じていないことを確認した。
飛島建設は2025年6月23日、森林研究・整備機構森林総合研究所、飛島建設技術研究所、ソイルウッドの研究グループが、80年以上前に地中に打設された丸太に大きな劣化が生じていなかったとする研究成果を発表した。木材の地中利用を進め「地下の森林」として活用することが、気候変動対策に有効である可能性を科学的に示す成果だとした。
丸太を地中に打設する工法はさまざまな場面で活用されている。飛島建設では千葉県の民間分譲住宅造成地約1万7000平方メートルに、液状化対策として1万3000本以上の丸太を打設した実績などを持つ。木材製品として丸太を長期間地中に打設したまま炭素貯蔵庫として活用することで、軟弱地盤対策だけでなく、気候変動対策にも活用することを目指している。しかし、これまで地中に打設された丸太の寿命に関するデータは少なく、どの程度気候変動対策として有効かは明らかになっていなかった。
今回、福井県内で、地下水面以深に80年以上にわたり打設されていた4本のマツ杭を対象に実験を実施。マツ杭の上部/中央部/下部から幅約2センチ、厚さ2ミリの薄片を48枚作製し、試験体として軟X線デンシトメトリーで詳細に観察した。
丸太外周部と内部の密度変動を可視化した結果、ほぼ同じ密度を示していることが分かった。バクテリアによる劣化(密度低下)が生じておらず、丸太が80年以上にわたって炭素貯蔵庫としての役割を維持していることが確認された。
一方で劣化しやすいとされる早材だけに着目した場合、一部に密度の低下が見られた。数百年間という長い期間埋設し続けると、晩材部まで徐々に劣化が広がり、最終的には全体の密度も低下していく可能性があるとした。
研究成果は2025年5月14日、Journal of Wood Scienceでオンライン掲載された。今回の研究の結果、地下の森林では、炭素蓄積量の半減期が製材(半減期35年)やパネル(同25年)と比較して格段に長くなる可能性が示唆されたとしている。
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