【第10回】「“設計BIM全社移行”を実現する社内教育の秘訣」(BIM啓蒙期・後編)BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(10)(2/2 ページ)

» 2020年10月16日 10時00分 公開
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“連携し統合するチームワーク”がBIMの真骨頂

 研修では、データ連携による統合モデルの作成と活用について、実践的な検証が行えただけでなく、見積もりや工場への連携といった次につながる内容でとても意義があった。「研修に参加することで、BIMに取り組む価値がやっと分かった」という声も聞けた。

BIMワークフロー研修のプレゼンテーション

 BIMワークフロー実践研修をやることで、参加者の多くが、BIMワークフローの重要性を再認識した。各部署がRevitでデータを作ることだけがBIMのあるべき姿なのではなく、“連携し統合するチームワーク”こそがBIMの真骨頂である。

 この研修は、2回開催し、8チームが参加した。しかし、定期的な研修として、この研修を継続的に実施することはなかった。なぜならば、この研修で、「BIMのワークフロー」を体験することはできるが、実務では、このような形で作業をすることはあまりないからである。

 しかしながら、BIMワークフロー実践研修は今にして思えば、BIM 360で「共通データ環境(CDE)」を作り、そのクラウド上でBIMワークフローを実践する仕組み作りのベースになったと考えている。

BIM啓蒙期と導入期の研修の違い

 2017年4月には、全社でのBIM導入が決定し、いよいよBIMの全社導入に向けた取り組みが始まることになる。実は啓蒙期と導入期では研修の目的が全く異なるため、研修自体も大幅に変更を加えている。

 啓蒙期では、社員が、BIMの良さに気付き、できるだけRevitを使った業務ができるように勧めるといったもので、社員の意識を高めるためのまさに啓蒙と言った教育を行ってきた。

 しかしながら、全社BIM移行への導入期では、設計部門全体がBIMによる生産性の向上を目指すといった目的に変化し、設計部門全員が各役割の範囲でRevitを使いこなすことが要求される。そのため、テンプレートやファミリなどのBIM標準も刷新し、全ての社員を対象に目標とする習熟度を掲げ、研修を受ける形に拡大した。

 このBIM導入期におけるBIM教育というものがどのようなものであるかは、次回以降に紐(ひも)解いていく。

著者Profile

伊藤 久晴/Hisaharu Ito

大和ハウス工業 建設デジタル推進部(旧・BIM推進部) シニアマネージャー(2020年4月1日現在)。2006年にオートデスクのセミナーでRevitの紹介をし、2007年RUG(Revit User Group Japan)の初代会長となって以来、BIMに目覚める。2011年RUG会長を辞して、大和ハウス工業内でBIMの啓蒙・普及に努め、“全社BIM移行”を進めている。「BIMはツールではなく、プロセスであり、建設業界に革命を起こすもの」が持論。

近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)。

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