当社は、設計BIMの全社移行を進めている。意匠・構造は、既に2020年の上期で80%近くまで移行している。しかし、これまで何の問題もなく順風満帆だったわけではない。当社がBIMに取り組むと決めたのは2017年の4月であり、それまでは、2011年から6年ほどが地道な「BIM啓蒙期」だった。今回は、当社のBIM啓蒙期にどのような社内教育を行ってきたのかを、実際の研修の事例を行いて、前後編で詳(つまび)らかにしていく。次回以降は、2017年以降のBIM導入期において全社BIMを実現する社内教育とどう違うのかを解説する。
2017年から全社BIM導入が始まったが、その前に、BIM導入検証の一環として、少人数の専任メンバーであたっていた啓蒙のためのBIM教育の取り組みを説明する。BIM啓蒙期に、私ともう1人の社員は専任でBIM化に取り組み、Revitを使った企画設計のルールや教育資料を作り、社内での研修も行った。このような地道なトレーニングで育った人材が、BIM導入期には、導入の先導役と成り、尽力してくれた。
当時のBIM研修は、意匠の企画設計の研修を主に行っていた。企画設計は、3次元を活用した初期の設計とプレゼンに、効果が出やすいと考えたからである。その研修は、基本的な知識や操作を学ぶ1泊2日の基礎研修(Aコース)と、次の段階の研修として、各人が持ち込んだ実業務を、Revitを使って設計する1泊2日の実践研修(Bコース)の2種類が運用されていた。その頃から、研修は基本的に、マニュアルの作成から講師まで、社員が担当するのが当社のベーシックなスタイルとなっている。
実践研修(Bコース)では、前述した通り、設計担当が実際に設計している物件を持ち込んでくる。建物用途も規模も自由なので、さまざまな物件が研修教材となった。
実践研修(Bコース)の特徴は、研修の最後に行うプレゼン演習である。プレゼン演習では、3分ほどの時間で、自ら作ったRevitのデータを使って、クライアントを想定したプレゼンを行ってもらった。
この研修は、Revitを使うきっかけにしかすぎない。会社としてRevitを使うことが正式に決定していない状況下では、管理職の理解を得られず、なかなかRevitに触れる機会も無く、研修で得た知識を忘れてしまうことも多かった。
しかし、BIMの必要性に気付き、可能な限り業務に活用しようとする者も少なからずいた。少人数でも、実務設計者の中からBIMの必要性を認識する社員が現れることが、次の布石となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.