【第10回】「“設計BIM全社移行”を実現する社内教育の秘訣」(BIM啓蒙期・後編)BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(10)(1/2 ページ)

当社は、設計BIMの全社移行を進めている。意匠・構造は、既に2020年の上期で80%近くまで移行している。しかし、これまで何の問題もなく順風満帆だったわけではない。当社がBIMに取り組むと決めたのは2017年の4月であり、それまでは、2011年から6年ほどが地道な「BIM啓蒙期」だった。今回は、当社のBIM啓蒙期にどのような社内教育を行ってきたのか、その結果、2017年から始まったBIM導入期にどのような成果をもたらしたか、そして、設計BIM全社移行を実現する社内教育には何を成すべきかを、前後編で詳(つまび)らかにしていく。

» 2020年10月16日 10時00分 公開

BIMワークフロー実践研修

 前編では、BIM啓蒙期に実施したRevitデザイン研修を採り上げたが、後編では、もう一つの特徴的なBIM啓蒙期の最終時期に開催した研修について説明しておく。

 その頃は、BIMを推進するために、意匠だけでなく、構造や設備のBIMにも着手していた。しかし、「意匠・構造・設備の統合モデルを作って、干渉をチェックし、整合性を確認するのがBIMではないのか?それぞれがBIMに取り組んでいるが、実務の中で本当に連携し、データを統合することができるのか?それがどういった効果があるのか?」という疑問符が社内でも散見された。

 そこで、意匠・構造・設備の担当者を集めてチームを作り、1泊2日の研修で、モデリングと統合モデルの作成、コーディネーションミーティングなどを行った。それが「BIMワークフロー実践研修」である。

意匠設計以外のBIMの取り組みについて

 前回は、企画段階での意匠の研修について説明したが、当社ではかなり早い段階から、意匠設計以外もBIMに取り組んでいた。

 2007 年には、次世代CAD検討委員会というものがあり、意匠・構造・設備・見積・工事・工場の全ての部門がBIMにどのように対応してゆくかの議論が始めていた。下記がその当時考えていた次世代設計システムの概要である。この当時からRevitをBIM業務の中心に置いたワークフローを考えていた。

2011年のBIM推進委員会で発表したBIMによる業務ワークフロー

 次世代CAD推進委員会は、2011年頃に、BIM推進委員会という組織に変更となり、各部門がBIMに取り組み、その成果を定期的に発表してきた。下記が、その当時のBIM推進委員会で説明したBIMによる業務ワークフローの案である。

2007 年に考えていた次世代CAD システムの概要

 このように意匠だけでなく、意匠・構造・設備・見積・工事・工場の5つの部門が、BIMに取り組んでいたが、具体的にどのようにデータ連携ができ、どのような効果があるのかがわからないという声を聞き、その検証のために、このBIMワークフロー実践研修を実施した。

BIMワークフロー実践研修

 この研修ではBIMワークフローの中で起きるイベントを意識し、「BEP(BIM⾏計画書)の作成」「キックオフミーティング」「コーディネーションミーティング」などを研修の中に採り入れた。

BIMワークフロー実践研修のスケジュール

 意匠・構造はRevitを使い、設備はダイテックの統合設備CAD「CADWe'll Tfas」でモデリングを行った。1回の研修で4チームを作り、それぞれのチームは、意匠・構造・設備・BIMコーディネーターの4人で構成した。下図の写真では、設備・意匠・構造・BIMコーディネーターの4人が机を並べて作業している。

BIMワークフロー実践研修でのキックオフミーティング

 この研修の主な流れは下記の通り。設計作業を終わらせた状態で研修に入り、1.キックオフミーティング、2.モデル統合化、3.コーディネーションミーティング、4.プレゼンテーションに取り組んだ。

 2日目には、見積もりの担当者が来て、初日に作成したデータから見積もり連携を試みた。

 工場連携については、ソフトメーカーに来てもらい試行した。このときは、基本となる連携の形を実証するにとどまり、今後の課題としたが、連携の糸口はつかめたと考えている。

BIMワークフロー実践研修の流れ

 なお、2のモデル統合化と3のコーディネーションミーティングは、3Dデザインレビューソフトウェア「Naviswroks」を活用した。

 普段は、意匠・構造・設備がともに机を並べて仕事をすることはなく、基本的には別々に作業を行う。この研修では、作業をしながらすぐに意見交換を行い、モデルに反映してゆく作業によって、どのチームもプレゼンテーションまで達成することができた。

BIMワークフロー実践研修でのコーディネーションミーティング
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