レンヌ、シンガポール、銀座――。最先端スマートシティー構築のバーチャルツイン協業プラットフォームを創造3DEXPERIENCE Conference ONLINE(1/3 ページ)

「スマートシティー」実現へ向け、世界各地で新しいプロジェクトが動き始めている。中でも「バーチャル・シンガポール」や「バーチャル・レンヌ」のプロジェクトは広く知られているが、この両者で計画プラットフォーム作りに使われたのが、仏DASSAULT SYSTEMES(ダッソー・システムズ)の「3DEXPERIENCE プラットフォーム」だ。オンラインイベント「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN ONLINE」で、同社の森脇明夫氏、佐藤秀世氏が行った発表から、その全体像を紹介する。

» 2020年09月29日 05時11分 公開
[柳井完司BUILT]

 2020年7月14日から8月7日まで、仏DASSAULT SYSTEMES(ダッソー・システムズ)が開催したオンラインイベント「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN ONLINE」では、モノづくりのプロセス最適化や新しい働き方などに関わる最新のケーススタディーが数多く紹介された。主催者のダッソーも、3DEXPERIENCEを中心とした多彩な活用事例を披露し、注目を集めた。その一つが「バーチャルツインを活用したスマートシティーの実例と構築について」と題する講演だ。

全てが集中する「都市」で、効率性・利便性・環境をいかに両立させるか

 最初に登壇したグローバル・マーケティング・ディレクターの森脇明夫氏は、「世界人口の66%以上が都市に集中し、温室効果ガスの70%が都市から排出され、さらに世界の自然資源の75%が都市部で消費されている。全てが都市に集中している傾向は、最近のCOVID-19の影響下でも大きく変わることはないだろう」。会社紹介に続く講演の本編を語り始めた森脇氏は、まず世界の都市問題について指摘した。そして、全てが集中する都市という場所でスマートシティーを展開していく上で、必然的に「効率性、利便性、環境をいかにして両立させるか?」と非常に困難な問題に直面しなければならないことを訴えた。

 「スマートシティーを考える上で、都市の将来は“計画”に依存していると言わざるを得ない。将来的な都市の発展は、どれだけしっかりした計画を立てられるかにかかっている」。

 例えば、その都市の特徴に合った明確な都市戦略を持っているかどうか。また、経済発展が確実に見込まれ、都市の魅力を向上させられるか。未知の感染症など危機への対応力は十分か――こうした問いにどう応え、公平な繁栄が持続可能な都市を計画していけるのか。諸問題を解決する糸口として、森脇氏はスマートシティー事例「バーチャル・レンヌ・プロジェクト」を引用しながら講演を進めた。

都市の変革を進めるための協業プラットフォームとして、町全体の3次元モデルを制作した「バーチャル・レンヌ」

 「レンヌ・メトロポールはフランスで10番目の規模を持つ都市。デジタルを用いた公共機関や企業、大学の協業であるデジタルエコノミーが盛んで、これを生かした新しいアプローチでの変革を目指していた」。

 だが、市町村合併を重ね拡大した町だけに、縦割り行政が阻む、横断的な協業や社会・ビジネスにおけるエコシステムの活性化、行政サービスのデジタルトランスフォーメーションの在り方が課題だった。そして、これらの問題に対処し変革していくための協業プラットフォームとして、3DEXPERIENCEを基盤にした3次元モデル「バーチャル・レンヌ」が計画された。

レンヌ・メトロポールの衛星写真をズームしていくと徐々に3Dモデルが表示されていく、バーチャル・レンヌのプロジェクト

 「では、レンヌ市での取り組みの一部を3DEXPERIENCEによるデモで紹介する。ご覧いただいているのが同地域のデータで、まず衛星写真データが表示され、ズームしていくと3Dモデルが表示される仕組み」。森脇氏に代わりデモンストレーションを担当したのは、ソリューションコンサルタントの佐藤秀世氏だ。同氏の操作により、画面上ではバーチャル・レンヌの3Dモデルが立ち上がっていく。町全体の3Dモデルはデータサイズも巨大になるが、動作は滑らかだ。必要な所だけ自動的に読み込み表示するように処理して、大規模なデータをスムーズに表示している。

 「3Dの町モデルには、さまざまな使い道が考えられる。町の未来像を見ることも可能で、レンヌ駅という鉄道駅の再開発を見てもらいたい」。そう語りながら、佐藤氏は画面上で各種機能を用いて活用法を見せていく。複数の案をシミュレートして比較したり、工事の進捗を段階的に検討したり、3Dで分かりやすく確認しながらディスカッションできることも示したりした。地図やイラスト、設計図面では伝わり難い景観の広がりや多様な施設へのアクセスも「人の視線」で検討し、さらにVRを使えば等身大で街中へ入り込むことさえ実現するのだ。

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