三菱地所設計 電気設備設計部 エンジニアの高※1正明氏は、「一般的な事務所は机上面の明るさを500から700ルクスで設定することが多いが、実証棟ではタスクライトの使用も考慮し、照度を350ルクスに設定した」と述べた後、建物のライティングについて触れた。
「事務室のベースライトは天井面にも光を照射する器具を採用し、従来の500ルクスの照明空間と同等程度の明るさ感を確保することで、快適性を損なわないような計画とした」(高氏)。
「共用部は、グレア(光が直接目に入りまぶしく感じること)を低減させられるように、間接照明や遮光角が大きい照明器具を採用し、省エネ性と快適性のバランスを見ながら設計した。北面の吹き抜けはダウンライトなどによる直接光を用いた計画ではなく、天井面をアッパーライトで照らし間接光で明るさを確保する計画とした。今後は、自然光の有効活用も検討している。事務室については、机上面500ルクスで計画した場合と比べて、タスクライトの消費電力を見込んでも約25%の消費エネルギーを削減できる見込みである」と続けた。
最後に阿折氏は、将来的な展望について「2017年にZEB関連技術実証棟のプロジェクトがスタートした時は、まだZEBの認知が低かった。この2年の間に、環境(Environment)/社会(Social)/ガバナンス(Governance)の要素を考慮したESG投資が広まり、最近は特に持続可能な開発目標(SDGs)が話題となっており、状況が一変した。ZEBの機運は高まっており、受注は増大すると思っている。規模が大きい建物はZEB対応が難しいが、6000平方メートル規模でZEBが達成できたのは大きな成果で、照明や熱効率に関する知見を得られたのは貴重な経験だった。国内におけるZEBの大幅な前進を成し遂げたが、今回のプロジェクトで得られたノウハウを生かし、今後1万平方メートル以上の規模でのZEB達成というジャンプアップの可能性は多分にある」とまとめた。
ZEB関連技術実証棟の設計を担当したチーム(左から、三菱地所設計 構造設計部 エンジニアの近藤千香子氏、電気設備設計部 エンジニアの高正明氏、建築設計三部 チーフアーキテクトの阿折忠受氏、建築設計三部の三原一哲氏、機械設備設計部 エンジニアの諫早俊樹氏、機械設備設計部 ユニットリーダーの羽鳥大輔氏)※1正式には、はしご高。
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