実証棟の設備を担当した機械設備設計部 エンジニアの諫早俊樹氏は、「ZEBの基礎的な話だが、ビルのエネルギー使用量を絞るだけでは、夏は暑く、冬は寒くなり、利用者が快適に過ごせない実用性の低い建物になる。そのため、快適性を確保した上で、ZEBに向けて設備機器容量をダウンさせるために、まずは建物自体の負荷を抑制するような建築的な工夫が必要だ」と語った上で、その工夫について解説した。
「ZEB関連技術実証棟は、ピーク時の日射負荷が大きい東西立面は面積を狭め、開口部を極力小さくした作りとなっている。反面で、南北面は広い立面とし、日射が強い南側では、水平庇を設け、影響を最小化している。加えて、日射負荷による影響が少ない北面は、窓や吹き抜けを配置することにより、明るさを確保した快適なスペースとしている。また、窓にはLow-Eガラスを採用することで、遮熱性と断熱性を高めている。その他、部屋の用途や空間ごとに、設計温度条件の設定を改めて検討し、建物内でも空調の強弱をつけた計画とした。特に吹き抜けの大空間を含めた共用部については、エネルギー消費を抑える目的から、緩やかな空調空間として位置付けている。空間の中であえて幅のある温熱環境をつくり、利用者が“場所の選択”により、好みの温熱環境を選べるようにしている」(諫早氏)。
ZEB関連技術実証棟は、1階に食堂、2階〜4階には、それぞれ3室ずつ実証に取り組むオフィスを設けている。三菱地所設計 機械設備設計部 ユニットリーダーの羽鳥大輔氏は、「食堂は、敷地全体の社員が使用することを前提としているため、通常の6000平方メートルの建築物が有する食堂より大きく、ZEBの観点で見れば、厳しい施設だ。だが、食堂としての機能はもちろんワークプレイスとしても利用可能なスペースとすることで、単純な省エネ性の追求だけではなく、従業員の働きやすさやコミュニケーションの活性化にも配慮した計画としている」(羽鳥氏)。
その上で、食堂の厨房の省エネ化については、「三菱電機の給湯器“エコキュート”など高効率な機器を導入し、エネルギー使用量を縮減した。現在は、提供する厨房の換気フードなどを最適化し、換気量を抑えられるかを検討している」。
自然エネルギーのパッシブ利用として、外気を効率良く取り込めるのもZEB関連技術実証棟の特徴だという。夏季の夜間や中間期において、室内よりも屋外の方が温湿度条件が優れている場合には、換気窓から自然風を取り込むことで、冷房負荷の低減を図る仕組みとなっている。
屋内北面の大規模な吹き抜け空間は、上部の熱だまりを用いて、重力換気を積極的に推進するシステムをプランニング。
さらに、中間期における敷地の気象データの分析から東南東の風が強いことが分かったため、風を取り入れやすいように、南側に外気の取り入れ口を設けている。
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