三菱電機が日本版ZEBの動向を解説「1万m2以下の取得ビルが88%を占める」ZEB(1/2 ページ)

三菱電機は2019年8月、国内で初めて6000平方メートル以上の中規模オフィスビル単体で、BELSの5スターとZEBを設計段階で取得した。技術説明会なども開催しZEBの普及啓発に注力している。

» 2019年09月26日 07時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]

 三菱電機は2019年9月20日、東京都千代田区の本社で、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)技術説明会を開催した。三菱電機 ビルシステム事業本部 ビル事業部 ビルシステム新事業企画部長の松下雅仁氏より、ZEBの概要について説明された。

きっかけはG8サミット

三菱電機 ビルシステム事業本部 ビル事業部 ビルシステム新事業企画部長の松下雅仁氏

 冒頭、ZEBの概要として、国内の環境対策とエネルギー消費動向やZEBが注目される背景、日本版ZEBの定義、ZEB設計のポイントなどに触れた。

 エネルギー白書2017によれば、1973年度から2015年度の国内における最終エネルギー消費推移は、実質GDPは2.6倍になったが、最終エネルギー消費は1.2倍に抑制された。産業部門ではエネルギー使用量が減少し、業務、家庭、運輸部門では増加した。

 こういった状況の中、ZEBが関心を集めたきっかけは、2008年11月に洞爺湖で開催されたG8サミット。国際エネルギー機関が、先進各国にZEBへの取り組みを推進することを勧告した。

 これを受け、2014年4月にはエネルギー基本計画を政府が閣議決定。2020年までに新築“公共”建築物などで、2030年までに、新築建築物の平均でZEBを実現することを定めた。

 さらに2015年11〜12月に開かれたCOP21(パリ協定)で、日本は2030年度に、CO2排出量をマイナス26%(2013年度比)にすることを宣言した。

COP21(パリ協定)で日本が定めたCO2削減目標(クリックで拡大) 出典:環境共創イニシアチブ

 エネルギー削減目標の内訳は、業務他部門でマイナス40%、家庭部門でマイナス39%、運輸部門でマイナス28%、産業部門でマイナス7%。

 松下氏は、「洞爺湖サミットでは各国にZEBの対応を進めるように勧告したが、具体的な仕様については決められなかった。そのため、それぞれの国で独自のZEBが構築されていった」と語った上で、日本版ZEBの定義を解説した。

 日本版ZEBは、建築の工夫と設備のエネルギー減少によるビルの大幅な省エネ化を前提としているという。その上で、太陽光を主とする再生可能エネルギー(再エネ)で、最終的には、年間の1次エネルギー消費量収支をゼロにすることを目指している。

日本版ZEBに求められる要件(クリックで拡大) 出典:環境共創イニシアチブ

 日本版ZEBの対象設備は、空調や換気、照明、給湯、昇降機で、OAなどがつながるコンセント系は対象外。その理由について、松下氏は、「日本版ZEBは、施設内の従業員やスタッフなどが、節電などの努力をせずに、利用するエネルギー量を減らすことに重点を置いているためだ」と答えている。

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