建築設計の課題とDXの波 人手不足時代にAIが果たす役割とは?【青山芸術解説】建設DX研究所と探る「建設DX最前線」(7)(2/2 ページ)

» 2025年12月22日 10時00分 公開
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「波が激しい」業界特有の課題

 建築設計のもう一つの課題は、業務量の波が極めて大きい点にあるのではないでしょうか。

 再開発や大型案件が佳境を迎えたり、重い実施設計が複数案件で重なったりする繁忙期には人手が足りず、閑散期にはリソースが余ってしまいます。従来は社内の人員でやりくりするのが一般的でしたが、いまやその発想を超えた柔軟な人材連携が求められています。

 そのため、得意分野が異なる事務所や建築士同士がプロジェクト単位でチームを組み、スキルを補完し合う動きが拡大しつつあります。マンション設計に強い会社、医療施設に精通した建築士、企画設計を得意とするデザイナー、緻密な実施設計に長けた技術者――それぞれの専門性を結集できれば、限られた人材でも高い成果を上げられます。

 青山芸術が運営する建築人材プラットフォーム「アーキタッグ」は、このような建築設計特有の課題に対してDXやインターネットの力を活用して解決を目指します。建築士のスキルや経験、稼働状況などをデータベース化し、最適なチームの編成を運営事務局の専門家が支援します。マッチングにはAIを活用したシステムの導入も進んでいます。従来は人的ネットワークに頼っていた領域を、テクノロジーで補完する仕組みです。

 設計の世界は、良い部分も含めて長らく「個の専門性」と「属人的なつながり」に支えられてきた部分が大半を占めているのではないでしょうか。しかし今後は、AIとネットワークが補助役となり、個々の専門性をつなぎ合わせることで、よりしなやかなチーム体制の構築や創造性の発揮が進展していくことが予測されます。

 AIやインターネットが全てを代替する未来ではなく、設計者の創造性を最大化するための「支援者」として共存する存在になっていく未来が予想されます。

著者Profile

桂 竜馬/Ryoma Katsura

青山芸術 代表。

金融・インターネットサービス開発の職歴と、建築系の家系で育った経歴から、2020年に青山芸術を立ち上げ。

慶應義塾大学 法学部 政治学科を卒業後、ドイツ銀行グループ、ゴールドマン・サックス東京支社およびニューヨーク本社にて、M&A・ファイナンシングのアドバイザリー業務に従事。

その後メルカリに入社し、創業者直下の会長室でM&Aや戦略立案の担当を経た後、Head of New Business / 越境 EC 事業 事業責任者 / プロダクトマネージャーとして、プロダクト開発ならびに新規事業開発の責任者を担当

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