建設DXへの期待感と、実現に不可欠な施工・経営情報の一元管理【アンドパッド解説】建設DX研究所と探る「建設DX最前線」(2)(1/2 ページ)

建設DXの推進を目的に建設テック企業が中心となり、2023年1月に発足した任意団体「建設DX研究所」。今回は、建設DX研究所の事務局も務めるアンドパッドが、中小建設事業者の働き方改革や課題解決につながる建設DXの重要性と施工・経営情報の一元管理の必要性について、施工管理ツールの活用事例も交えながら紹介します。

» 2025年06月05日 10時00分 公開

 建設業界は人々の生活に欠かせない社会の基盤産業でありながら、多様な課題を抱えています。

 建設需要は年々増加する一方、就業者数は減少が続いており、人手不足はますます深刻化しています。日本商工会議所の調査では、建設業の8割が「人手不足」と回答しており、数字からも建設業界の担い手の確保の難しさが表れています。

 労働生産性も低く、年間の労働時間/出勤日数は他業種より多い傾向にあります。なかなか若年層の就業が進まず、総務省によれば、従事者の約3割が55歳以上、さらに29歳以下は約1割にとどまり、高齢化も大きな課題となっています。

 業界課題に加え、建設関連法令などの環境変化にも対応が必要です。

 2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限(月45時間/年360時間)が適用され、対応が必要となりました。違反には入札停止などの罰則も科されることから、建設事業者にとっては待ったなしといえます。さらに2025年4月には、改正建築基準法と省エネ法がダブルで施行。具体的には2階建て木造住宅も構造審査の対象となり、設計図書の提出が必須となりました。

 また、全ての新築住宅/非住宅で省エネ基準適合も義務化しました。さまざまなルール改正への対応で、事務作業や行政手続きの負担はますます増大すると予想されます。

建設関連法令のダブル施行で、建設従事者の負担はさらに増大 建設関連法令のダブル施行で、建設従事者の負担はさらに増大 出典:photoAC

中小建設事業者の建設DXへの期待

 目まぐるしく変わる建設業界を取り巻く状況にあって、建設DXへの期待は日々高まってきています。

 建設業は、95%が中小企業(従業員19人以下)という裾野の広い業界ということも特徴ですが、業界別のDX投資金額は他業界と比較して規模が小さいとの結果が出ています。建設業界全体のDXのためには、中小建設事業者のDXが必要不可欠です。

 アンドパッドが実施した調査によれば、経営層の約半数が「残業削減にはDXが重要」と回答しています。書類作成などに3時間以上かかる業務が多く、IT化の遅れが課題との声が多く寄せられました。そのため、約73%が「DXの導入が必要」とし、事務負担の軽減とコア業務への集中が求められています(出典:アンドパッド「時間外労働の上限規制調査」)。

 また、当社による別の調査では、建設従事者の約半数が「業務増加」を懸念しており、特に書類作成や設計関連業務の負担が挙げられた上、業務量や残業の増加、情報管理の煩雑化も指摘されています。

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