大成建設は、環境配慮型コンクリートの技術を応用した、シールドトンネル工事向けの裏込め注入材を開発した。CO2排出量を従来比の60%から最大110%削減できる。
大成建設は2025年9月30日、環境配慮型コンクリート「T-eConcrete (ティーイーコンクリート)」の技術を応用した、シールドトンネル工事向けの裏込め注入材を開発したと発表した。既存の設備や施工プロセスをそのまま利用して現場導入でき、CO2排出量を従来比の60%から最大110%削減できる。
一般的な裏込め注入材は、セメントを主成分とする「A液」と水ガラスが主成分の「B液」を混合し使用する。セメントは生産過程でのCO2排出量が多いため、大成建設はT-eConcrete のうち、高炉スラグを活用した「セメントゼロ型」と炭酸カルシウム混練の「Carbon-Recycle(カーボンリサイクルコンクリート)」の2つの技術をA液に応用。それぞれ、標準的な強度発現を満たす「通常強度タイプ」と、標準値の5倍の強度を発現しトンネル急曲線部など特殊条件で使用する「早期強度タイプ」の2種類を用意した。
材料製造時のCO2排出量削減割合は、従来の裏込め注入材と比べて、セメントゼロ型の通常強度タイプが70%、早期強度タイプが60%、Carbon-Recycleの通常強度タイプが110%、早期強度タイプが105%。Carbon-Recycleは通常強度/早期強度の両タイプともCO2排出量収支が実質マイナスとなるカーボンネガティブを実現する。
このうち、セメントゼロ型の早期強度タイプは2025年10月から、名古屋市上下水道局発注の「名駅南雨水幹線下水道築造工事(その2)」全線での適用が決定している。
実機プラントでの製造試験や延長約1キロに相当する圧送実験、注入1時間後の一軸圧縮強度試験などを実施し、製造効率やポンプ圧送性、A液とB液混合後の可塑化時間や強度などが、従来の裏込め注入材と同等だと確認済み。
従来の裏込め注入材のA液に用いていたセメントを置き換えるだけで使用できるため、既存の設備や施工プロセスを変更せずに従来と同様に施工/品質管理が行える。
大成建設は今後、同社が手がけるシールドトンネル工事への適用を推進していく。
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