Terra Droneは、独自技術で低価格化したドローンレーザースキャナーや屋内点検用ドローンを武器に、建設や社会インフラの現場で導入を拡大。運航管理システムも欧米を中心に普及が進む。「低空域経済圏のグローバルプラットフォーマー」を目指すのTerra Droneに、ドローンが現場にもたらす価値や活用の現状、そして今後の展望を聞いた。
建設や社会インフラ維持管理の現場でドローン活用が広がり、測量や点検の手法が大きく変わりつつある。ドローン関連事業を国内外で展開するTerra Drone(テラドローン)は2025年8月26日、経済産業省主催の「日本スタートアップ大賞 2025」で国土交通大臣賞を受賞。測量や点検の現場で積み重ねてきた実績が、国土交通分野の社会課題解決に結びついていると評価された。
テラドローン 代表取締役社長 徳重徹氏は、「創業以来注力してきた土木測量事業が評価されたのは大きな励みになり、社員の誇りになった」と語る。受賞時には石破茂総理とも直接対話する機会を得て、建設業界のDX化への期待を実感したという。
テラドローンは、現場での測量/点検/農薬散布などを担う「ドローンソリューション」と、複数のドローンや空飛ぶクルマの運航を安全で効率的に管理する「運航管理システム(UTM)」の2本柱で事業を展開している。
ドローンソリューション事業は国内外で累計3000件超の実績を持ち、2025年1月期には海外売上高比率が56%と半数を超える。インドネシアやマレーシアで展開する農業向け利用も売り上げ構成の14%を占めるまでに拡大した。UTMも欧州をはじめ世界10カ国以上で利用実績があり、両事業ともグローバル展開が進む。
2025年1月期の通期実績では、ドローンソリューションの売上高が前期比46%増の38億700万円、UTMは前期比179%増の売上高6億2800万円となった。
ドローンソリューション事業のうち、測量分野では、ドローンに搭載して地形や構造物の3Dデータを取得するレーザスキャナー「Terra Lidarシリーズ」を提供している。2016年の創業時には1500〜3000万円程度が当たり前だったドローンレーザースキャナーの価格を、独自技術で約3分の1に抑え、1000万円以下で提供。中小測量会社でも導入できる水準にし、市場の裾野が広がった。
「当時発売したTerra Lidarシリーズの初期モデルについては、高価なIMU(ジャイロセンサー)を使わず、GNSSのみで位置/姿勢を推定できる技術を早稲田大学と共同開発し、搭載した。測位精度5センチ以下を確保しながら低価格化を実現できた」と徳重氏は説明する。
現在発売している3種のモデル(Terra Lidar Dual、Terra Lidar X、Terra Lidar R)は、IMUとGNSSを両方用いて位置、姿勢を推定している。
テラドローンの試算では、約30ヘクタールの現場でドローン測量サービスを導入すると、人手では45日かかる測量が1.5日で完了。9割以上の作業時間を短縮できるという。人が立ち入れない急斜面や重機が稼働する危険区域でも上空から安全にデータ取得が可能で、建設現場の効率化と安全性向上を同時に実現する。災害発生時には屋根被害の迅速な調査や保険請求や修繕見積もりにも活用でき、復旧の迅速化に寄与する。
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