大成建設は、建設用3Dプリンティングに適用可能な環境配慮コンクリートを国内で初めて開発した。今回の技術で製作した建設部材は、コンクリートの性能を確保しつつ、複雑で多彩なデザインと機能を持ちながら、CO2排出量削減を実現。また、こういった部材を2022年度中に大成建設グループ企業が保有する大成ユーレック川越工場のリニューアル工事に実適用する。
大成建設は、CO2排出量を削減する環境配慮コンクリートの開発で培ったコンクリート材料や製造技術のノウハウを活用し、建設用3Dプリンティングに適用可能な環境配慮コンクリートを開発したことを2022年12月19日に発表した。
同社はこれまで、大気中や工場などの排気ガスから回収したCO2で製造した炭酸カルシウムと、高炉スラグ主体の結合材を固化させることで、コンクリート内部にCO2を固定するカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle(ティーイーコンクリート・カーボンリサイクル)」を開発し、シールドトンネルなどのインフラ構造物や研究施設、工場への適用実績を重ねてきた。
加えて、CO2排出量の抑制や脱炭素型社会の実現に貢献するため、環境配慮コンクリート「T-eConcrete」も開発した。
一方、コンクリート構造物の施工法として、2018年から型枠を使わずに複雑な形状の建材を短時間で自動製作し、省人化施工が可能な建設用3Dプリンティング技術「T-3DP(Taisei-3D Printing、タイセイスリーディープリンティング)」の開発も進めている。
2020年には、プレストレストコンクリート構造を適用したコンパクトな歩行専用の「橋」を製作し、トポロジー最適化手法※1に基づき、従来の型枠による施工では実現困難な軽くて強い構造体を完成させた。
※1 トポロジー最適化手法:構造分析、感度解析、モデル変更を繰り返しながら不要な材料を削り、最終的に軽くて強い構造になるような形を見つける手法。
上記の技術は、省人化や生産性向上だけでなく、型枠などの建設廃材や使用材料を削減するために、CO2排出量の抑制など、環境負荷低減に貢献する。
こういった保有技術を組み合わせ、CO2排出量の軽減を達成するために、3Dプリンティングに適用する環境配慮コンクリートを開発した。
新たな環境配慮コンクリートは、3Dプリンティングへの適用が困難だった環境配慮コンクリートの特性を踏まえ、構成材料の組み合わせや比率、混和剤の配合などを調整することで、最適な粘性と流動性を保ち、建設用3Dプリンティングに適用する。
具体的には、独自開発したT-eConcreteの技術を生かし、セメントの代わりとなる高炉スラグに、大気中や工場などの排気ガスから回収したCO2あるいは石灰石の粉砕・分級により製造される炭酸カルシウムなどを練り混ぜた建材を3Dプリンタで製作できる。
さらに、CO2排出量は、使用する炭酸カルシウムにより、一般的なコンクリートと比較して、1立方メートル当たり160〜350キロ減らせる。例えば、大気中や工場などの排気ガスで回収したCO2から製造した炭酸カルシウムを用いた場合には、CO2排出量の収支は1立方メートル当たり50キロのマイナスとなる。
また、3Dプリンティングを活用して、さまざまな用途や機能形状、大きさなど、多彩なデザインと機能を有する部材の製作が行える。
今後、大成建設は、T-eConcreteとT-3DPを組み合わせることで、建材製作と施工のバリエーション拡大やデザインの高度化を進め、多彩な環境配慮建材の提供と施工技術の実用化を通じて、CO2排出量の抑制と脱炭素社会の実現に貢献していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.