鹿島建設は山岳トンネル工事において、吹付けと支保工建込み作業を自動化/遠隔化する「エレクタ付き2ノズル自動吹付け機」を実工事に初導入した。
鹿島建設は2025年9月1日、山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル フォー トンネル)」のうち、吹付けと建込み作業を自動化/遠隔化する「エレクタ付き2ノズル自動吹付け機」を実工事に初導入したと発表した。横浜高速鉄道が発注する神奈川県横浜市の「みなとみらい21線車両留置場建設工事(土木工事)」で本運用を開始する。
導入した自動吹付け機は、オペレーター1人で2ノズルによる効率的な自動吹付け作業と、遠隔操作による支保工の建込みが可能。肌落ち災害の危険性がある切羽近傍に人が立ち入ることなく作業できる。
鹿島建設は2017年からA4CSEL for Tunnelの開発を開始し、2021年には岐阜県飛騨市の「神岡試験坑道」で実際の地山を対象とした実規模施工試験に着手した。2024年には山岳トンネル工事の掘削作業6ステップ(穿孔、装薬/発破、ずり出し、アタリ取り、吹付け、ロックボルト打設)に使用する重機全ての自動化と遠隔化を実現している。
今回導入した自動吹付けシステムは、単心円状の掘削断面に加え、馬蹄形や扁平形状など多様なトンネル形状に対応する。また、新開発のシミュレーターにより作業を3D座標空間で再現でき、任意の断面に対する吹付け/建込み動作の事前検証と実績の分析/評価が可能となった。次の施工サイクルに向けた改善も迅速に実施できる。
支保工の建込み作業では、ガイダンスシステムの適用に加え、高強度吹付けコンクリートの採用により金網設置を不要とした。これにより、切羽近傍に人が立ち入らない安全な作業環境を構築した。
自動吹付けシステムは、3Dレーザスキャナーで切羽形状を測定し、吹付け計画を自動生成。エレクタと左右ノズルの動作を相互監視する衝突防止機能や近接時に稼働速度を調整する競合防止機能を搭載している。建込みガイダンスシステムは、支保工の建込み目標位置に応じてエレクタブームの目標姿勢を計算し、結果に基づいてエレクタブームを操作することで設計通りの位置への建て込みを可能とする。専用の支保工と組み合わせることで、従来3〜4人の技能者が必要だった作業をオペレーター1人で代替できる。
鹿島は今後、他現場へもシステムを搭載した自動吹付け機の展開を進めていく。
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