鹿島建設は古河ロックドリルと共同で、山岳トンネル工事のロックボルト施工を自動化する「2ブームロックボルト施工機」を開発した。
鹿島建設は2023年11月21日、山岳トンネル工事のロックボルト施工を自動化する「2ブームロックボルト施工機」を古河ロックドリルと共同開発し、岐阜県飛騨市の神岡試験坑道に導入したと発表した。
従来の古河ロックドリル製2ブームロックボルト施工機に、センサーやプログラムなどを追加し、新たに「穿孔位置の自動位置合わせシステム」と「自動ロックボルト打設装置」を搭載した。これにより、これまで手動で切り替え操作を行う必要があった、穿孔位置への誘導、穿孔、モルタル注入、ボルト挿入までの一連作業を機械化した。
施工機を施工位置に配置するだけで、必要な数量、間隔でのロックボルト工の一連作業を行える。施工速度と精度を保ちながら、作業員の苦渋作業を軽減し、安全性を向上できるとしている。鹿島建設によると、これらの作業の自動化は世界初だという。
穿孔位置の自動位置合わせシステムは、設計データと、坑内トータルステーションで計測した本体位置データをもとに、打設装置を穿孔位置まで誘導し、打設角度の設定を行う。人力での穿孔位置のスプレーマーキング作業やブーム操作などが不要になる。
自動ロックボルト打設装置は、穿孔、モルタル注入、ボルト挿入の3つのセクションから成る。施工機の左右のブームに装備し、切替は回転動作のみで行う。
コンピュータジャンボに搭載された自動穿孔技術により、軟岩から硬岩まで幅広い強度の岩盤に対し、ロックボルトの長さに応じた安定した穿孔が可能だ。また、機械後方に配置したモルタル注入機と連動することで左右同時にモルタルを注入できる。ロックボルトは10本装填(そうてん)が可能で、左右で最大20本を連続挿入できる。3〜6メートルのロックボルトに対応する。
鹿島建設は山岳トンネル工事の自動化に向けて、自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル・フォー・トンネル)」の開発を進めている。山岳トンネル工事の掘削作業を、1.穿孔、2.装薬、3.ずり出し、4.アタリ取り、5.吹付け、6.ロックボルトの6つに分解し、各工程で使用する重機の自動化/遠隔化と一元管理を目指している。
神岡試験坑道では、同システムの実規模模擬施工試験を行っている。その規模は、トンネル掘削321.3メートル、掘削断面積はアプローチ部で43.9平方メートル、自動化施工試験部で73.5平方メートル。
掘削作業のうち、ロックボルト工は崩落の危険があるトンネル切羽近傍での人力作業が主体で、1本約20キロのロックボルトを高所で挿入するなど、作業員の安全確保などが課題となっていた。
鹿島建設は2018年、北海道の大狩部トンネル工事で、ロックボルト工のうちモルタル注入とボルト挿入作業を機械化した。2019年にはこれらの作業に穿孔を加えたロックボルト工の一連作業を全て機械化した「1ブームロックボルト打設専用機」を開発し、高知県内の新規放水路工事に導入している。
この次の段階として、今回、自動穿孔技術などを取り入れて一連作業を自動化するとともに、2ブーム化により施工速度を倍速化する「2ブームロックボルト施工機」を開発した。
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