鹿島建設が開発を進めてきた次世代山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル フォー トンネル)」が完成した。岐阜県飛騨市の神岡試験坑道で、山岳トンネルの掘削作業6ステップ全ての自動化と遠隔化に成功した。
鹿島建設は2024年7月31日、岐阜県飛騨市の神岡試験坑道で、山岳トンネルの掘削作業6ステップ全ての自動化と遠隔化に成功し、次世代山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル フォー トンネル)」が完成したと発表した。
今後は各作業ステップの自動化施工技術を順次、他の工事にも導入していく。機能の追加や改良を加えながら、労働災害の発生リスクが大きい切羽付近での災害ゼロと、山岳トンネル工事の省力化と生産性向上を推進する。
A4CSEL for Tunnelは山岳トンネル工事の掘削作業を、(1)穿孔、(2)装薬、(3)ずり出し、(4)アタリ取り、(5)吹付け、(6)ロックボルト打設の6工程に分けて、それぞれのステップで使用する重機を自動化して一元管理する建設生産システム。2017年から開発に着手し、2018年からは静岡県富士市の模擬トンネルをフィールドに、重機の自動化開発と基本動作の確認を進めてきた。
2021年からは、開発した自動化重機を実際の工事現場と同等の環境で実証するため、実坑道の神岡試験坑道で地山を対象とした自動化施工の開発をスタートした。神岡試験坑道のトンネル掘削延長は321.3メートル、掘削断面積はアプローチ部43.9平方メートル/自動化施工試験部73.5平方メートル。
鹿島建設は切羽付近の作業以外にも、覆工コンクリート打設の完全自動化技術、補助工法であるAGF工法の機械化技術などを実用化している。これらの技術を総合的に適用することで、山岳トンネル工事の安全性と生産性の向上に寄与していく。
神岡試験坑道での主な開発成果は以下の通り。
(1)穿孔/最適自動発破設計システム:穿孔時に取得した岩盤データから、最適な発破パターンを自動生成する。このデータを全自動コンピュータジャンボに転送することで、オペレーター1人での自動穿孔を可能とした。従来施工と比較して、余掘り量を60%低減、サイクルタイムを20%短縮した。
(2)装薬/バルクエマルション爆薬:国内の山岳トンネル工事で初めて、現場製造式の「バルクエマルション爆薬」を採用した全断面発破を実施し、許認可関係省庁に公開した。
(3)ずり出し/自動ホイールローダ、遠隔バックホウ:LiDARをホイールローダに搭載し、この計測データをもとに坑内の地図を作成しながら自機の位置をリアルタイムで推定するSLAM技術を活用。非GNSS環境下のトンネル坑内で、掘削ずりのすくい取り、運搬、荷下ろしを自動化した。遠隔バックホウとの連携で、ずり出し作業時の切羽付近の完全無人化を実証した。
(4)アタリ取り/アタリガイダンスシステム、遠隔ブレーカ:ブレーカ本体に3Dレーザスキャナーを搭載し、切羽に立ち入らなくても発破直後の露出した岩盤形状を定量的/自動的に評価できるガイダンスシステムを開発した。また、ブレーカの遠隔操作によるアタリ取り作業時の切羽の完全無人化を実証した。
(5)吹付け/エレクタ付2ノズル自動吹付け機:2ノズル自動吹付け機に3Dレーザスキャナーを搭載。切羽形状の測定結果をもとにして吹付け計画を自動生成し、左右2ノズルをプログラム制御する「自動吹付けシステム」を開発した。従来の1ノズル自動吹付けと比較して施工時間を約50%短縮した。また、このシステムで培ったノウハウを支保工の建込み作業に応用した「建込みガイダンスシステム」を開発し、人が切羽近傍に立ち入ることなく、運転席からオペレーター1人での建込みができることを確認した。
(6)ロックボルト打設/自動ロックボルト打設機:穿孔位置への誘導から穿孔、モルタル注入、ボルト挿入までの一連作業を自動化するブームを左右2つ備えた「2ブームロックボルト施工機」を開発した。3〜6メートルのロックボルトに対応し、施工速度と精度を確保した上でオペレーター1人でのロックボルト打設を可能とした。
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