本連載では、総合人材サービス会社で建設業向けの人材サービスを展開するヒューマンリソシアが、独自に調査した建設業における人材動向を定期レポートとしてお届けする。建設業従事者の人材動向に関する実態を解明し、建設業各社の採用・定着に向けた戦略を考えるうえで少しでもお役に立てれば幸いである。今回は、建設業界の転職市場を厚労省の「雇用動向調査」から読み解く。
建設業では、慢性的な担い手不足で賃金が高騰し、人材獲得競争も激化している。そこで今回は、厚生労働省の「雇用動向調査」から、建設業の最新(2024年)転職動向を分析した。
■本レポートの要旨
・他産業から建設業への転職者数が大幅に増加
・特に、30〜40代の転職者の増加が際立つ。ターゲットを他産業にも広げ、中堅層の人材採用を強化していることがうかがえる
・建設業では転職者の49.5%で賃金が増加しており、全体平均の40.6%を大きく上回る。特に29歳以下の若手や40代の中堅層で、転職による賃金増の割合が高い
厚生労働省の「雇用動向調査」によると、建設業内での転職者数は8万7500人で、2023年の9万7500人から10.3%減と、業界内での転職は減少した。一方で、他産業から建設業への転職は10万6100人となり、2023年の7万5600人から40.3%増と大幅に増加した。
建設業から他産業への転職者数は11万3400人で、前年並みとなった(図表1)。その結果、転職により建設業就業者数は7300人の減少となり、同3万7600人減だった2023年と比較して減少幅は縮小した。
年齢階級別にみると、30歳代の他産業から建設業への転職者数は、2023年の2万人から2024年は2万5200人に増え、26.0%増だった。40歳代は、同6900人から同2万1200人と大幅に増え、増加率は207.2%増となった。50歳代でも、同1万100人から同1万7300人で71.3%増と、大幅に増加した(図表2)。
一方、建設業から他産業への転職者数は、30歳代が2023年の2万8300人から2024年には1万9400人となり、31.4%の減少。40歳代が同2万5300人から同1万8900人と25.4%の減少と、大幅なマイナスとなった(図表3)。なお、60歳以上の他産業への転職者数は、同8100人から同2万2900人(182.7%増)と大幅に増加している。
その結果、30歳代の転職による建設業就業者数の増減は、2023年の8300人減から2024年には5800人増、40歳代も同1万8400人の減少から同2300人の増加とともに増加に転じた(図表4)。また、60歳以上は同1700人増から同1万1700人の減と、大幅なマイナスに反転した。
上記データから、建設業では30歳代、40歳代の他産業への流出防止に注力するとともに、採用ターゲットを他産業にまで拡大し、中堅層の人材獲得を図っていることが見てとれる。なお、60歳以上のシニア層の他産業への流出が増えていることは、今後の課題になりそうだ。
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