名主邸」を三井不動産グループの総合力で、“経年優化”の考えに基づき再生した。伝統的構法の建物にも適用できる制震システム「Hiダイナミック制震工法」を採用し、屋根材を瓦から金属素材に葺き替えて軽量化も図り、伝統的な建物意匠を最大限保存した。
三井不動産と三井ホームは2025年8月19日、東京都世田谷区上用賀で、江戸時代後期に建築された築250年以上の旧家「旧用賀名主邸」の耐震改修工事が完了し、2025年7月末に竣工したと発表した。
改修工事は、時を経るごとに味わいが増す“経年優化”の思想に基づき、解体する箇所を極力減らし、建物の伝統的な意匠を残したまま耐震性能を向上させて、安全性の高い物件に再生した。
日本の住文化や趣を体感できる古民家は、近年注目を集める一方、地震災害への備えなどに課題を抱えている。旧用賀名主邸は、オーナーが三井不動産 レッツ資産活用部との所有不動産に関する多岐にわたる相談をする中で、「所有する古民家を最大限残しながら、安全な状態で次代へ残す」という意向を伝え、改修することを決めた。
旧用賀名主邸の所在地は東京都世田谷区上用賀3-11-3。構造と規模は、木造平屋建て4SLKの間取りで、延べ床面積は約220平方メートル。工事は三井不動産 レッツ資産活用部が総合計画、三井ホームが設計・施工を担い、2025年3月に着工し、2025年7月31日に完了した。
耐震性の確保では、江戸川木材工業が開発した「Hiダイナミック制震工法」を採用。古民家のような伝統的構法の建物にも採用可能な制震工法で、建物の壁に複数の制震オイルダンパーを取り付け、大地震時に建物の変形を吸収し、柱や梁(はり)、壁などへの負担が軽減する。
床や天井の仕上げ材は極力壊さず、建物南側の特徴的な意匠も残すため、南面居室の天井や床、縁側は仕上げ材も含めて改修せず、その他の部屋で制震オイルダンパーを設置して耐震性を満たした。床や天井、縁側などの特徴的な意匠を最大限保存した状態で耐震性能が向上し、解体する箇所も極力減り、工事費の低減にもつながった。
日本家屋の伝統的構法となる柔構造の特性上、従来の重い瓦屋根では地震時に建物が揺れやすくなる。そのため、屋根材を日本瓦から軽い金属素材へ葺き替え、屋根の総重量を約16分の1に抑えて建物全体の軽量化を図った。
制震工法と屋根材の軽量化で、層間変形角を30分の1以下とし、日本建築防災協会による一般耐震診断で評点は0.3程度から評点1.0相当以上となった。一般耐震診断で0.7未満は倒壊する可能性が高く、1.0以上が推奨されている。
用賀名主邸は、江戸時代後期に用賀村名主の飯田安之丞 、元文時代に彦根藩世田谷領の代官を務めた飯田平兵衛が居を構えた。内外装は1955年頃に改修されたが、骨格となる柱や梁は1780年頃の創建当時のまま残っている。現在は世田谷区の郷土資料として歴史研究の対象となっている他、CMやドラマなどのロケーション地としても活用されている。
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