LD-Mapは、従来の紙台帳や事後対応型の管理体制から脱却し、現場主導での効率的な点検、記録、分析のプロセスを一気通貫で網羅するプラットフォームを目指した。開発に当たっては、自治体の声を取り入れて機能改善を繰り返すプロトタイピングで、道路附属物の維持管理という特有の業務に最適化した。特徴は「現場完結型の点検プロセス」「クラウドベースのデータ蓄積と活用」「誰でも使えるユーザーインタフェース」の3つ。
現場完結型の点検プロセスでは、デモで証明した通り、現地に居ながらスマホやタブレットだけで、識別番号の読み取りから写真撮影、状態確認、記録登録まで一連の作業が完結する。事務所に戻って台帳を更新するといった煩雑な手間がなくなり、点検から報告までのリードタイムが大幅に短縮する。
クラウドの利点は、現場で取得した情報が即座にデータベースへ反映される点にある。写真付きで履歴管理が可能になり、経年劣化の傾向分析や修繕計画への反映、担当者間の情報共有も容易になる。災害発生時には、被害状況を迅速に可視化するツールとしても活用が期待される。
操作画面はシンプル設計で、技術職でなくともICTに不慣れな職員でも感覚的に扱えるインタフェースとなっている。点検対象を構成する部位(灯部、支柱、基部、開口部、周囲の植栽)に応じてガイドが表示されるので、作業者はその流れに沿って写真を撮影すればよい。
2025年度以降は、愛媛県全域への展開を見据えており、他府県からの導入希望も既に寄せられているという。正式リリースは2026年度で、将来はガードレールや標識など点検対象の拡張とともに、センサーデータの取り込みによる劣化の予兆検知なども視野に入れている。また、国のインフラ長寿命化計画や自治体のスマートシティー戦略との連携も想定し、LD-Mapは地域のインフラ管理の標準ツールとして定着する可能性を秘めている。
LD-Mapの実証は、愛媛県のトライアングルエヒメの一事業として、2024年10月から検証を進めている。トライアングルエヒメは2022年度にスタートし、愛媛県を「日本一のデジタル実証フィールド」と位置付け、県内外の企業が有する最新技術を県内の自治体や地域事業者とマッチングさせ、現場での検証を重ねながら導入を進めていく仕組みだ。
実証に当たっては、県が伴走型で支援し、事業者との課題設定やフィールド調整、勉強会の開催などで現場起点での改善と地域連携を図り、現在までに農業や観光、製造業、インフラ管理など幅広い分野でのプロジェクトを進めている。
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