“心ととのう駅”へ 大正建築を再現した北九州の「折尾」駅で香りの演出FM

福岡県北九州市の大正時代の駅舎を再現したJR「折尾」駅舎で、香りによる演出を2025年8月24日まで展開する。コンセプトは「心ととのう駅」で、電車の待ち時間を快適で心地よい体験へと転換を試みる。

» 2025年08月14日 10時00分 公開
[BUILT]

 SOU FRAGRANCEと九州旅客鉄道(JR九州)は、福岡県北九州市のJR「折尾」駅で、香り演出の実証実験を実施している。期間は2025年8月24日までで、駅で過ごす数分間を香りによって快適で心地よい体験に転換し、利用者にとって今よりも“好きな場所”に変わる可能性を探る。

「駅の質感」を変える、見えないデザイン

 日本初の立体交差駅として知られる折尾駅は、2021年1月に新たな駅舎として生まれ変わった。かつて複数の路線が交差し、「JR九州管内で最も乗換が難しい」ともいわれた駅は、約20年にわたる「折尾地区総合整備事業」で、空間としての分かりにくさを払拭した。駅舎機能の集約や北側駅前広場の整備で、迷路のようだった構造はスッキリとした動線に再構築し、市民にとって快適で魅力的な場へと進化を遂げた。

 折尾駅の再整備は単なるインフラ更新にとどまらず、大正時代の趣と、現代的で洗練された建築美が共存する“時間の交差点”として、新たな物語を紡ぎ始めている。

左から旧折尾駅駅舎、新折尾駅駅舎 左から旧折尾駅駅舎、新折尾駅駅舎 出典:JR九州プレスリリース

 SOU FRAGRANCEは、そうした駅空間に“視覚/触覚ではない第六の空気”として香りを加え、利用者の心理的ストレスを和らげ、記憶に残る好感情を育てることを目指している。

 実証実験のコンセプトは「心ととのう駅」。駅で過ごすほんの数分をただの“待ち時間”にするのではなく、香りの力で“快適さ”と“感情”のある体験へと転換。香りが生み出す、わずか数秒の「体感の記憶」で、駅と人との新しい関係性を創出する。

 香りの演出には、駅の歴史的背景と現代性を融合させた香りを採用。香りの名称は「Awai-折尾ノ香」と命名し、木と柑橘の軽やかさと落ち着きをテーマに調香した。「時を巡る旅人の足元に、爽やかな柑橘が弾け、静かな森がささやく。大正から令和へ、折尾の風が語りかける」をイメージしたという。

「Awai-折尾ノ香」は、ピンクグレープフルーツのフレッシュさ、ユーカリシトリオドラの爽やかさ、ヒノキの静けさ、フランキンセンスやサンダルウッドの深み、ベンゾインの温かみなど、天然精油 100%を使用 「Awai-折尾ノ香」は、ピンクグレープフルーツのフレッシュさ、ユーカリシトリオドラの爽やかさ、ヒノキの静けさ、フランキンセンスやサンダルウッドの深み、ベンゾインの温かみなど、天然精油 100%を使用 出典:JR九州プレスリリース

 期間は2025年7月25日〜8月24日で、地域素材を用いた空間演出の可能性をはじめ、香りによる空間快適性や滞在印象の変化、アンケート調査による駅利用者の感情的記憶への影響、香りと駅ブランディングの親和性を検証する。結果をもとに、今後は他駅や他施設などへの展開も予定している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.