3Dプリンタ駅舎「初島」駅が利用開始、約2時間で組み上げ完了デジタルファブリケーション

JR西日本は、和歌山県有田市JR紀勢本線「初島(はつしまえき)」駅3Dプリンタ駅舎の利用を開始した。

» 2025年07月28日 12時00分 公開
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 セレンディクスは、JR西日本グループと共同で和歌山県有田市に建設した3Dプリンタ駅舎JR紀勢本線「初島(はつしまえき)」駅が、2025年7月22日から利用を開始したと発表した。

「初島」駅新駅舎 出典:セレンディクスプレスリリース

 新駅舎は9.9平方メートルの鉄筋コンクリート造平屋建てで、内部には2人掛けのベンチ、券売機、簡易ICカード改札機が設置。外壁には積層痕を意匠として生かし、有田市特産品のミカンとタチウオをモチーフにした装飾を施した。意匠設計はヌーブ一級建築士事務所と西日本旅客鉄道大阪一級建築士事務所が、構造設計はKAP一級建築士事務所と西日本旅客鉄道大阪一級建築士事務所が担当した。施工協力は芳輝建築、3Dプリント協力は立尾電設。

ミカンとタチウオをモチーフにした装飾を施した 出典:セレンディクスプレスリリース

 初島駅は1948年に完成した木造駅舎を使用していたが、老朽化が進行し、無人化が進む中で、維持管理の効率化が課題となっていた。一般的に駅舎の建設は夜間に作業を行う必要があり、躯体の設置に1〜2カ月を要する。今回のプロジェクトでは、3Dプリンタ住宅で培った技術を応用し、終電から始発までの6時間で全工程を完了することを目標に掲げた。

 駅舎の部材は、熊本県水俣市の立尾電設工場で製造した。特殊モルタルをロボットアームの先のノズルから吐出してパーツを出力。内部に鉄筋とコンクリートを充填して一体化させ、強度を向上させた。製造には7日間を要した。

 完成した4パーツをトラックで現地に搬送し、2025年3月25日深夜の最終列車通過後に作業を開始。荷台からパーツをクレーン車で吊り上げて建築場所に設置した。組み上げ工程は約2時間で完了した。このうち約45分は車両の入れ替えで、実質作業時間は1時間15分だった。その後、運搬用金具の取り外しや固定作業などを行い、翌26日午前5時にはすべての工程が終了した。

3Dプリンターで壁パーツを出力 出典:セレンディクスプレスリリース
躯体の組み建て作業 出典:セレンディクスプレスリリース

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