帝国データバンクの調査で、従業員の退職を要因とする人手不足倒産が増加していることが分かった。建設業では2025年1〜7月に17件が発生した。
帝国データバンクは2025年8月6日、従業員の退職を要因とする人手不足倒産(従業員退職型倒産)の調査結果について発表した。2025年1〜7月に判明した従業員退職型倒産は74件で、前年比1.6倍に増加していることが分かった。集計開始以来の最多件数を更新した。
2025年1〜7月に発生した人手不足関連の倒産は、全国で251件に上った。このうち、従業員や経営幹部の退職が直接または間接的な要因となった従業員退職型の倒産は74件だった。
建設業では17件が判明。設計者や施工監理者など業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員や営業担当役員など幹部社員が相次いで退職し、事業継続が困難となった例が目立ったという。建売住宅を展開していた佐賀県のクレセントホームは、2025年5月に破産。新代表の就任後、幹部社員が相次いで退職したことにより、営業力と施工力が低下して経営破綻に至った。
また、満足な給与水準を提供できずに従業員の大量離職を招いた「賃上げ難倒産」も発生している。東京の不動産仲介業のウィルプライズは、2025年4月に破産した。業績が悪化したことで給与引き下げを実施した結果、従業員の退職が相次ぎ事業継続が困難になった。
好待遇で人材を確保する動きが進む一方、業績の悪化などから賃上げが困難な一部の中小企業では人材の確保が難しくなっている。今後も従業員に対し十分な報酬を支払う余力のない企業の従業員退職型倒産が懸念されている。
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