筆者は第6回「現場BIMの活用例 Vol.2」で、「ゼネコンはフロントローディングで、BIMパラメーター情報を登録し、専門工事会社と連携する『データ主導型のワークフロー』を構築するべきではないか」と提言した。この視点は、特に地方ゼネコンにおいて、生産性向上と技術革新の鍵となるだろう。今回は、具体的な事例として、岩手県盛岡市のタカヤによるBIM活用を紹介する。その挑戦は、地方ゼネコンのBIM活用の可能性と、建設プロセス変革への道筋を示している。
岩手県盛岡市に本社を置くタカヤは、2017年からBIM(Building Information Modeling)の全社的な導入を進め、建設業界が直面するさまざまな課題に対し、デジタル技術を活用した革新的なアプローチで解決を図っている。人材不足や生産性向上という業界全体の課題に対し、地方ゼネコンならではの視点で新しい可能性を切り拓こうとしている。
★連載バックナンバー:
『建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜』
本連載では、野原グループの山崎芳治氏とM&F tecnicaの守屋正規氏が共著で、BIMを中心とした建設産業のトランスフォーメーションについて提言していく。設計BIMについては語られることも多いため、本連載では施工現場や建材の製造工程などを含めたサプライチェーンまで視野を広げて筆を進める。
「2Dではなく、これからは3Dの時代になる」。2017年、当時の社長の言葉がBIM導入の契機となった。2017年8月のAutodesk Revit導入後、約2年間の試行錯誤を経て、2019年からBIMコンサルティング企業「SEEZ」のサポートを受けつつ、本格的な推進体制を整えていった。
現在、タカヤは従業員206人(男性169人、女性37人)を擁する総合建設会社として、建築事業、環境建設(土木)事業、街づくり事業と住宅事業、リノベーション事業、不動産事業など、幅広い分野で事業展開している。
特筆すべきは「ファクトリア」と命名した工場建築のブランドだ。代表取締役社長 細屋伸央氏は、「作業ができればそれで良いという箱のような工場は建設しない。デザイン、コスト、機能のバランスが取れたより良い生産環境を創出する」と説明する。岩手発祥で東北を中心にマンションや病院系など、さまざまな施設を手がけて発展してきたが、関東や四国で手掛ける工場案件のほぼ100%はファクトリアに基づく工場案件だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.