三菱地所設計は、木材加工時に生じる木の粉を再活用する生産システムを構築した。設計から、製造、3Dプリンティング、物流、現地での組み立てまでのプロセス全体でCO2排出量を抑制する。プロトタイプとして、木質3Dプリント建築物「TSUGINOTE TEA HOUSE」を制作し、コンセプト映像とともに三菱地所設計 本店エントランスに展示している。
三菱地所設計は、自社デザインスタジオと木質建築ラボで、建築や家具のデザインから施工までに至る木質3Dプリントを用いた木材資源の生産システム「Regenerative Wood(リジェネラティブ・ウッド)」を構築したと2024年7月に発表した。そのプロトタイプとなる木質3Dプリント建築物「TSUGINOTETEA HOUSE」を本店の総合受付に展示している。
三菱地所設計本店の展示。木粉を生じる木の製材作業から、3Dプリンティングに至るまでの一連の制作プロセスをたどったメイキング動画も併せて上映中。「TSUGINOTE TEA HOUSE」内に置かれた茶器も同様の手法で制作。右は木粉を用いたフィラメントを重ねていく3Dプリンティング 出典:三菱地所設計プレスリリースRegenerative Woodは、フィラメント(3Dプリンタで建築部材を出力する際に材料となる成形用の樹脂素材)に、木の製材加工時に生じる木粉を用い、廃棄物をリジェネラティブ(再生可能)な素材とする資源循環の試み。
あらゆる木材加工の工程で廃材として生じる木粉を原料に、3Dプリント時の安定性を確保した独自の木質材料を製造。プロジェクト現場付近の木を用いて原料を輸送する際に生じるCO2排出を抑制したり、3Dプリンティング時に出力部材の小材化を図ることで一般の物流に載せ、人の手で組み立てられるようにするなど、生産フロー全体での環境配慮を図っている。
Regenerative Woodの考え方と技術を実証するプロトタイプとして、世界初を謳う木質3Dプリント建築物「TSUGINOTE TEA HOUSE」とカウンターパーテション「Regenerative Wood #1」を制作。TSUGINOTE TEA HOUSEは、ブラジル・サンパウロ市で開催した「NIHONCHA」展(会期:2023年12月〜2024年4月)と、「Good Design Marunouchi 企画展 TOKYO WOOD TOWN 2040 山と木と東京」を経て、三菱地所設計本店で展示している。
小規模な軽量パーツに分割して輸送し、少人数で組み立てられるため、社員4人の手作業で約2時間程度で施工が完了した。茶室の規模は高さ約1.9メートル、奥行き約1.7メートルの3次元曲面から成り、高精度の継手仕口で金物を使っていない。
独自の「木質3Dプリント素材」の製造コラボ第1号として、MEC Industryと協業。2種のプロトタイプのうち、Regenerative Wood #1のフィラメント製造にあたっては、当社が技術協力などを行っている三菱地所グループのMEC Industryから木粉の提供を受けた。製材などの際に発生してしまう木粉を無駄にしない、「ゼロ・ウェイスト(Zero Waste/ごみをゼロにする目標のもと、廃棄物量を削減していくこと)」を目指す。
三菱地所設計は既に、三菱地所グループ各社とともに、育林/伐採から製材、企画、設計、運用までをつなぐ一連の木材利用ネットワークを構築している。建築や都市環境の木造、木質化の過程で生じる廃棄物を減らしていくシステムのRegenerative Woodを通して、ネットワークを強化し、より一層の木材利用を推進していくとしている。
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