現時点のスマートコンストラクションは、施工段階の地形、建機、作業員、材料などがデジタルデータで連携している。地中などの現実には見えない情報も断面図のように視覚的に把握し、現場のさまざまな課題を浮き彫りにして、設計との誤差も日々のPDCAで改善につなげられる。
工事の進捗に伴い日々変化する地形に合わせ、変更を余儀なくされる建機の最適な走行ルートや仮設道路の位置なども、事前のシミュレーションで検討できる。ICT建機を用いれば、建機の刃先の情報を基に施工進捗が分かり、ドローンなどによる測量が必要なくなる。
管理画面上では、工事スケジュールと現況の差も確認。遅れがみられる工事には、過去の実績データから建機の台数や配置を見直して、正常化させるなどの対策も講じられる。
スマートコンストラクションを推し進めるために開発したのが、3D施工を標準とする20トンクラスの新世代油圧ショベル「PC200i-12」だ。3Dマシンガイダンス機能を標準で備え、「SDV(Software Defined Vehicle)」も実装している。SDVにより、今後は機体を新たに買い替えるのではなく、ソフトウェア更新だけで作業精度の向上や各種機能の追加が可能になる。
3Dマシンコントロール機能は、ユーザーが必要な時だけ使えるサブスクリプション形式で提供。そのため、工事内容に応じ、コストを抑えた柔軟な運用が実現する。
なお、PC200i-12には、下記のソフトウェアを標準搭載している。
配車管理アプリ。機械やアタッチメントの配置を共有し、建設機械の情報を遠隔で確認する「Komtrax(コムトラックス)」とも連携
ペイロード(可搬重量)管理アプリ。切削した重量とダンプの積載量をリアルタイムでICTモニターに表示し、積載管理の負荷を軽減。CSVデータの出力にも対応している。※有料版は、ダンプや建機などの車両と人をリアルタイムでモニタリングできる
現場のデジタルツイン化アプリ。3D地形データや設計データを取り込み、現場を画面上に可視化する。PC200i-12と連携すると、施工履歴を高精度な3Dデータで確認できる。i-Constructionに準拠した出来形管理や帳票の出力も可能
ファイルの閲覧や共有のアプリ
コマツは、スマートコンストラクションを加速させる目的で開発部隊を分社化し、2021年にEARTHBRAINを立ち上げた。四家氏は、「スマートコンストラクションのソフトウェア開発では、従来の建機とは異なるスピード感や技術が求められる」とし、新たな開発文化の醸成にも期待を寄せている。
EARTHBRAINは、スマートコンストラクションに関するアプリケーションとプラットフォーム開発を担う。四家氏は「コア技術は内製化で開発スピードを高める。そのために社員の約半数を開発技術者で構成している」と強みを強調した。
現在はAIを活用し、ドローンなどで取得した点群データをダッシュボード上で写真のように見せる技術の確立を進めている。2025年秋にも市場投入を予定しているという。
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